へんな旅ばかりしています。

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令和元年14発目、ANAファーストクラスで行く世界遺産。その5:祝!フランク・ロイド・ライト世界遺産登録!2年前の旅ふりかえり。

そもそも「ファーストクラスで行く」世界遺産、って何だよ、って話なのですが。

 

2019年7月、フランク・ロイド・ライトの8つの建築物が世界遺産に登録されました。世界三大建築家と言われる中で、ミース・ファン・デル・ローエは2001年にチェコのトゥーゲントハット邸が、ル・コルビュジエは東京の国立西洋美術館を含む7カ国17作品が2016年に既に登録されており、「やっと実現したのね」という感じ。ただ、「世界遺産」ってのは個人の偉業を賞賛するものではなく「顕著な普遍的価値」があるもの、となっているので、この建築が人類にとってどのような価値を持つのか、という面を示すのに時間を要した、という感じのようです。

 

実はちょうど2年前の9月の同じ時期、フランク・ロイド・ライトの建築を訪ねる旅をしていました。世界遺産に登録された作品もその際にいくつか訪問しており、今回の旅は2年前のフォロー的な意味合いもあるので、ちょっと振り返りを。

 

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名古屋からはデルタ航空利用でデトロイト経由にてピッツバーグへ。空港でレンタカーを借りて、ライトの建築で最も有名なものの一つ「落水荘」を目指します。ここは2019年に世界遺産に登録されています。

 

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見学はガイドツアーに参加する必要があります。通常のツアーは日中15~30分ごとに催行されていますが、館内の写真撮影はNG。より参加費の高い、詳しい説明のあるツアーなどに参加する必要があります。このときは朝に2本催行されるIn-Depth Tourにしました。

 

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In-Depth Tourは通常ツアー参加費が30ドルに対し80ドルもかかりますが、1回20名程度と少人数に抑えて2時間たっぷり案内してもらえます。そのせいか人気が高いようで、かなり早いうちに手配しないと予約が取れない感じでした。

 

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この落水荘、もともとはピッツバーグで百貨店を経営していたカウフマン家の別荘として建てられたもの。1936年完成、長い低迷期にあったライトが復活するきっかけとなった作品の一つです。

 

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落水荘からほど近いところにあるダンカン邸も立ち寄りました。こちらは1957年と時代は新しめ。ライトが晩年に提唱していた「ユーソニアン住宅」のフォーマットによる作品の一つです。

 

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ピッツバーグからはニューヨークへ移動し、ニューヨーク近代美術館へ。

 

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2017年はライト生誕150年ということで、6月12日から10月1日まで大規模な回顧展「Frank Lloyd Wright at 150:Unpacking the Archive」が開催されました。これを観たくてこの時期の渡米を選んだというわけ。

 

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印象的だったのは、かなり広い会場の中でも比較的大きなスペースで「帝国ホテル」を紹介していたこと。

 

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帝国ホテルのライト館は1923年の竣工ですが、ちょうどライトが長い低迷期に入った時期にあたります。また、実はライトの作品って、それまで住宅など比較的小規模のものが大半で、これだけ大規模な施設は「ほぼ初めて」とも言えるんです。加えて、よく指摘される「ライトが日本や東洋の文化に影響を受けている」という点が伺える好例がこの「帝国ホテル」ということもあり、ライトのキャリアの中でも特別な作品、という位置づけなのかもしれません。

 

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またニューヨークのライトの建築といえばグッゲンハイム美術館ですよね。これも今年、世界遺産に登録された建築群のひとつです。

 

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このときは展示替えのため、有名な螺旋型ギャラリーには入れませんでしたが、ロビーから眺めることはできました。最上階から螺旋状にスロープで降りながら鑑賞するギャラリーは展示スペースが連続するという利点から着想いたようですが、実際には悪品鑑賞の時に床が斜めで集中できない…という不満の声もあるよう。そのあたりが「グッゲンハイム美術館で最も有名な作品は建物自体」なんて言われる所以かもしれません。

 

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ニューヨークからはライト建築の総本山とも言えるシカゴへ飛びます。まずはロビー邸の見学に向かいました。ここも世界遺産になりました。

 

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ロビー邸の竣工は1906年。ライトの第1期黄金期、「プレーリースタイル」の集大成のような作品です。所々に寄せ木細工っぽいパーティションなど「和」の雰囲気がどことなく漂っている感じ。芦屋にある「ヨドコウ迎賓館」にも、どことなく似ています。

 

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シカゴ近郊、ライトの手がけた建築が多数残っているオークパークも訪問。こちらはライトの住宅兼事務所。オークパークのライト財団のビジターセンターにも使われています。

 

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事務所はかなり立派で、相当イケイケだったことが窺われますが、ライトはここを離れなければいけない状況になってしまいます。ま、そのお話は後で。

 

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オークパークではライトの手による住宅建築を巡りましたが、ハイライトはこのユニティテンプルでした。2015年から修復工事に入っており、修復完了の時期がどんどん延長されていたんですよ…。幸いなことに2017年の6月に修復が完了し、7月から内部見学ツアーも再開されたので、このときも観ることができました。

 

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ユニティテンプルの完成は1908年。2つの建物を回廊で繋ぐ構成や、坪庭的なものが所々あったり、というあたりが「日本の影響」である可能性は高いのではないか、とのこと。

 

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シカゴからはウィスコンシン州ラシーンにあるSCジョンソン本社ビルにも行きました。シカゴからは100km以上離れており、公共交通で行くのも難しいロケーションなのですが、このときはシカゴ建築財団とSCジョンソン社との共同企画とうことで、シカゴからSCジョンソン本社とジョンソン家の住宅「ウィングスプレッド」を巡るツアーがなんと参加費無料で催行されており、有り難く恩恵を受けることにしたわけです。

 

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事務所棟は1936年、ちょうど落水荘と同時期の作品。落水荘とともにこの建築も高い評価を受けたことから、ライトの第2期黄金時代がはじまる、みたいな感じになるわけです。中央にそびえる研究棟は1950年に追加されたもの。防災基準を満たさなくなったので業務では使われていませんが、見学ツアーで内部公開されています。

 

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見学ツアーではライト設計の建物内部での撮影は不可。事務所棟の玄関のガラス扉越しにパチリ。この作品の特徴の一つでもある「キノコみたいな柱」が林立しているのが分かります。

 

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こちらは「ウイングスプレッド」。SCジョンソン社のオーナー、ジョンソン家の邸宅として1939年に完成したものです。「ウイングスプレッド」の名の通り、上から見ると中央から四方に羽を広げたような形。また大企業のオーナーの邸宅ということで、他のライトの住宅建築に比べると規模は相当大きくなっており「プレーリースタイルでは最大の建築」とも言われているようです。

 

2017年の旅では「落水荘」「ロビー邸」「ユニティテンプル」「グッゲンハイム美術館」と、世界遺産になった8つのうち4つを訪問したことになります。このときはスケジュールの都合で、ライト晩年の住宅兼スタジオでもある「タリアセン」訪問を諦めています。いつかリターンマッチを!と考えていたのですが、ANAのマイルで取れたファーストクラスの行き先がシカゴとなったので「これはチャンス!」と思った次第。

 

今回の旅では、2日目からはライトの建築群を巡っていきます。