へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

令和元年14発目、ANAファーストクラスで行く世界遺産。その9:いよいよ潜入、フランク・ロイド・ライトの総本山「タリアセン」。

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アメリカ3日目、今日はいよいよフランク・ロイド・ライトの総本山、「聖地」ともいえる「タリアセン」訪問です。「タリアセン」とはウェールズ語で「輝ける額」という意味。ライトはここに1911年にシカゴから移ってきました。

 

ライトは1893年アドラー&サリバン建築事務所から独立(っていうか闇営業がバレて辞めざるを得なくなったって感じですが)、シカゴ近郊のオークパークに自宅とスタジオ、自分のオフィスを構えます。住宅建築をメインに「プレーリースタイル」と呼ばれる様式を確立して「イケてる建築家」としてのキャリアを順調に重ねていたのですが、ここでこのお方、やらかしちゃいます。自分に住宅設計を依頼したクライアントの奥さんとデキちゃった、要は不倫関係になっちゃったんです。ライトは結婚していて子供も6人いたのでダブル不倫ってやつですね。今であれば「ありがち」かもしれませんが(それでいいのか)、1900年代初頭のアメリカでは「不倫」なんて厳しい目で見られたであろうことは想像に難くありません。1909年にライトはオークパークのオフィスを閉めて、不倫相手のチェニー夫人とヨーロッパへ駆け落ちしてしまうのですわ。

 

2年後の1911年にはシカゴに戻りますが、駆け落ちしてきました、なんて状況なので元のオークパークへは帰れず、親から譲ってもらったこの地に新しい「愛の巣」を設けることになった次第なのです。こんな状況なので仕事も殆どなかったようですが、ぽつぽつ依頼も入り始めた1914年、またスキャンダルが発生。使用人がチェニー夫人とその二人の子供と弟子4名の計4名を斧で惨殺して放火、という凄い事件が起きてしまうのです。ここでライトはまたゴシップの主人公となってしまいます。そんなどん底状態で出てきたのが、東京の帝国ホテルの設計の話だというから凄い巡り合わせです。ライトの自伝では「はるばる東洋から自分の名声を聞きつけて”是非お願いします”って頼みに来られちゃう俺すげー」みたいな記載なのですが、本人が相当売り込みしてたって話もあるみたいだったりして。

 

なお、この「タリアセン」は今でもライトの建築事務所となっていますが、会社というよりは建築学校のような形態だそう。なお、「タリアセン」はアリゾナ州にもあり、「タリアセン・ウエスト」と呼ばれ、冬になると避寒のためにそちらに移ります。「タリアセン」はもちろん、「タリアセン・ウエスト」も世界遺産登録されました。

 

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まずはこちらのビジターセンターで受付。今回は4時間かけてタリアセン全体を観て廻る「エステイトツアー」へ参加します。このビジターセンターは元々レストランとして設計されたものだそうです。正面に停まる赤いバスに乗って出発です。

 

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最初にやってきたのはヒルサイドスタジオ。建築事務所としての機能はここにあります。元々は叔父の始めた学校の建物として設計されたものです。

 

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ホールですが、窓側に並んだソファがライト建築っぽい。

 

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こちらは今でもダイニングルームとして使われているそうです。

 

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こちらは製図室棟ですが、現役バリバリで設計作業を行っているため、この内部だけ撮影NGです。

 

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こちらは劇場のある棟です。

 

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中に入ると、入口付近の天井がかなり低く作られていました。この位置から外の景色を眺めることを意図した高さだそう。

 

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劇場はそんなに大きなものではありませんが、弟子と音楽のコンサートなどを楽しんでいたそうです。また仏像っぽいものが置かれていたりと、所々に日本やアジアを感じさせる装飾がありました。

 

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ここから丘を登っていきます。

 

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丘の上に建つのは「ロミオとジュリエットの風車塔」、1896年に設計されたタリアセンで一番古い建築物です。二人が抱き合っているように見えるので、こんな名前がついたんだとか。

 

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風車棟の近くに建つのは、ライトが妹夫婦のために設計した住宅です。

 

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暫く歩いて行くと、また建物が見えてきます。

 

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こちらは農業施設として使われている「ミッドウェイバーン」。家畜をここで飼っていたこともあったそうです。

 

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そして暫く進むと丘の上に…。

 

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タリアセンが見えてきました。

 

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敷地内へ。

 

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このテラスでコーヒーブレイクがありました。これはツアー代金に含まれています…って参加料92ドルもするしね。

 

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テラスからの眺め。

 

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ここまで観てきて感じたのは、なかなか修復が追いついてない面もあるのかなぁ、ということ。こちらも、よく見るとバルコニーの張り出し部分の付け根に亀裂が入っているみたいな感じですよね。

 

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休憩の後、外観をぐるっと眺めていきます。

 

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カーポートへの入口。

 

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先ほどのテラスの裏側にあたるところまで進みます。

 

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ここから、いよいよ建物の内部へ。

 

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ここも入口が凄く低く作られていました。

 

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こちらはライトのスタジオとして使われていた部屋。

 

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ライトが仕事の打ち合わせなどに使っていたテーブルがこちら。

 

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こちらも東洋趣味の装飾品が多数飾られ、壁面には屏風まで設置されています。これだけ日本やアジアの美術品に囲まれていながら「あたしゃ日本とかアジアとかの影響は受けてないよ」っていうライトの言い分は信じられないよねぇ。

 

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こちらはゲストルーム。

 

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ライトの住宅建築でリビングなどでよく設置される暖炉がここにもあります。

 

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一旦バルコニーへ出ます。奥に見える、崖の方に伸びたバルコニーは今では立ち入り不可。眺めはよさそうですが。

 

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夫妻の寝室。

 

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こちらは家族用のリビングルーム。ここにも屏風が。

 

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先ほどのバルコニーの大きな窓に面して開放的です。

 

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こちらはライトが晩年に寝室として使っていたスペースだそうですが、ベッドが妙に小さいんですよね。

 

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テラスに繋がるリビングルーム。なお、こちらにはライト建築でよく観られるステンドグラスの窓がありません。ライト曰く、ステンドグラスの窓は街中の住宅でプライバシーを確保するためのもので、外部からの視線がないこの家では不要だし、外の景色がちゃんと見える方がいいでしょ、という理由なんだそうです。また、ドアの取っ手が妙に高い位置に付けられたところがあるのですが、なんでそんなことをしたのか、ライトは結局明かさなかったとのこと。恐らく、子供が触れないようにするとか、目線を前に持って行くことでドアを開けたときに窓の外の景色に視線が行くように、というような理由ではないか、だとか。

 

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ここで4時間にわたる見学ツアーは終了。バスでビジターセンターへ帰ります。

 

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ビジターセンターにはショップとカフェがあります。カフェのほうはお値段もそれほど高くないので、まぁ記念だしと思いランチはこちらで戴くことに。

 

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ハンバーガーを注文しましたが、これが大当たり、旨いです。チップ込みで14ドルほどですが、パティがジューシーでいい感じ。フライドポテトも塩加減が絶妙でした。