へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

令和元年20発目、アムトラック大陸横断。その10:ニューヨーク発シカゴ行き「Lake Shore Limited」乗車1日目。

さて、いよいよアメリカ西海岸を目指して列車の旅が始まります。

 

アメリカで長距離の旅客列車を運営しているのは全米旅客鉄道公社(National Railroad Passenger Corporation)、通称「アムトラック」です。アメリカの鉄道は基本的に「私鉄」で、長距離列車も各私鉄が運行していました。しかしながら航空輸送や自動車交通の発展により各鉄道会社の経営は悪化し、特に採算性の悪い旅客輸送は1960年代にどんどん廃止されていきます。これに対して「輸送モードの選択肢を確保する」という観点から連邦政府100%出資で「旅客列車を運営する会社」を設立し、各私鉄の長距離鉄道の運行を引き継ぐことにしたわけです。日本だと旅客輸送を行うJR6社が線路を保有し、JR貨物が線路を借りて貨物列車を走らせていますが、アメリカの場合は逆。貨物輸送を行う私鉄各社からアムトラックが線路を借りて旅客列車を走らせているんです。「アムトラックはよく遅れる」一因となっているのがコレで、各鉄道会社は自社の貨物列車の合間にアムトラックの旅客列車を受け入れる形になるため、どうしてもダイヤ通りにならないことが起きてしまう模様。事故も度々起きており、正直なところアメリカ人からのアムトラックの評価ってのはあまり芳しくない感じです。実際、こちらの知り合いには「え?鉄道で行くの?危ないから止めときな」みたいな反応されることが結構あります。収益的にも厳しく、常に赤字を垂れ流している状態だそうです…。

 

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で、アムトラックのニューヨークでの発着駅であるペンシルベニア駅にやってきました。

 

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この駅は「マディソンスクエアガーデン」の地下に位置しています。以前はこの場所にグランドセントラル駅を凌ぐレベルの荘厳で巨大な駅舎があったのですが、駅舎を所有するペンシルベニア鉄道はこれを取り壊し、地上部分を「マディソンスクエアガーデン」にリースしてしまったのです。

 

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ペンシルベニア駅からはアムトラックのほかロングアイランド鉄道などの近郊路線も発着しているため乗客は多く、駅構内はかなり手狭な印象です。

 

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そんなわけで、駅施設のアップグレードプロジェクトが進行中です。隣の敷地にある郵便施設の建物が新しいペンステーションの駅舎となる予定です。

 

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地下のコンコースにはショップなども並んでいます。もう午後2時過ぎですが昼食はまだ。これから「アメリカっぽい」食事が続くので、こちらで寿司をお持ち帰りで購入しました。

 

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アムトラックではファーストクラスや寝台車の利用者向けに、一部の駅にラウンジを用意しています。ここペンステーションには「クラブアセラ」があります。

 

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内部はなかなか綺麗でいい感じ。それほど広くはありませんが、居心地はいいです。

 

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ただしソフトドリンクとちょっとしたスナック程度しか飲食物はありませんが。

 

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ココで先ほど仕入れたお寿司を戴きました。

 

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シカゴ・ユニオン駅行きの「Lake Shore Limited」は15:40発。出発20分前にラウンジ内に搭乗案内のアナウンスが入り、乗客は一旦ラウンジ前に集合させられます。そこからアムトラックのスタッフが先導してホームまで案内してくれました。

 

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ホームには一応「駅名標」らしきものも。

 

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こちらがこれから乗車する車両。「ビューライナー」と呼ばれる寝台車両です。今日のニューヨーク発の編成は機関車を先頭に荷物車1両+座席車5両+食堂車+寝台車2両、という構成。

 

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利用するのは「ビューライナールーメット」と呼ばれる、定員2名の個室寝台です。中央の通路の両側に個室が並びます。

 

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車内は進行方向に向かい合う座席が並びます。

 

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座席はこんな感じで、座面を引き出すと寝台になる仕組み。583系と同じですね。

 

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その向かい側の座席。

 

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こちらの座席の横にはこんな設備があるのですが…。

 

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なんと、これトイレなんです。室内にトイレがついてるのは便利といえば便利ですが、普段座る椅子の隣が便座って違和感あるなぁ…。2名定員の部屋なので、一人がトイレを使いたいときにもう一人はどうすればいいの?って気もするし。なお、車両には共用のトイレはないので、基本的にここを使うことになります。

 

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トイレの上には洗面台が設置されています。

 

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上段のベッドは引き下げて使用する形。

 

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なお、同じ車両にはもっと広い「ビューライナーベッドルーム」もあります。

 

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寝台車にはシャワールームもあります。こちらは寝台車の乗客なら、いつでも無料で利用可能。バスタオルもシャワールームに備え付けられています。

 

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座席車ですが、シートは大きくて日本のグリーン車くらいはありそう。これなら一晩くらいは全然イケそうですよね。

 

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この列車には食堂車が連結されていますが、寝台車の乗客のためのラウンジスペース的な使われ方をしています。

 

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ニューヨークは定刻で発車。寝台車の乗客は、この列車だとソフトドリンクは無料で頂けるので、食堂車で貰ってきたジンジャーエールを飲みながら部屋でのんびり。

 

しかしさすが?アムトラック、発車2時間ほどで遅れが出始めます。2つめの停車駅であるポキプシーで20分遅れとなり、発車して暫く進むと列車は止まってしまいました。この先の線路で障害が発生して進めないらしい…。3つめの停車駅ラインクリフには1時間半遅れでの到着となりました。

 

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ここで夜7時過ぎ、晩ご飯を食べに食堂車へ。アムトラックでは寝台車を利用すると朝昼晩の食事が無料で提供されます。ただ「Lake Shore Limited」では「New Dining Option」というのが導入されており、通常の食堂車の営業はなく、セットミールが提供されるだけになってしまっています。ホットミール3種類くらいから選べるようになっていますが、導入当初はコールドミールしかなく、食堂車の連結も取りやめになっていたんだそう。あまりに酷い内容でクレームも多かったことから、寝台利用者のサービスステーションとして食堂車が復活し、食事もレンチンですが温かい物が提供されるところまでは改善された、みたいです。食事サービスがグレードダウンした罪滅ぼしのつもりなのか、通常は有料となるアルコールドリンクが食事時には1回だけ無料で貰えます。このときはチキンのクリームソースを選びましたが、まぁ「喰える」レベルではありました。

 

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食堂車のカウンターに張り出された寝台車乗客向けメニュー。この食堂車は基本的に寝台車の乗客のために存在しており、座席車の旅客に販売する「食べ物」は扱っていません。ドリンク類だけは販売していました。

 

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オールバニーには1時間40分遅れ、夜8時20分に到着しました。ここでボストンから来た編成を併結します。ボストンからは寝台車1両+カフェカー+座席車2両という構成で、これがニューヨークからの編成の前に連結されました。このカフェカーが座席車の乗客向けの飲食物を販売する役割を持っているので、ニューヨークから座席車に乗ってきた乗客はここまで空腹を我慢させられていたわけで…。まぁ本来は夜7時前に着いてる筈なんだけど。逆に、ボストン編成の寝台車の旅客は、ここで食堂車と合流するまでは夕食が食べられなかったことになるのよね。

 

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では、寝台をセットして今日は寝ます。