2月に「奈良ホテル」へ宿泊して以来、少しばかり「クラシックホテル」にハマりそうになってます。で、お膝元ともいえる愛知県にも「正統派」なホテルがあるじゃありませんか、と「蒲郡クラシックホテル」に泊まってみました。
「蒲郡クラシックホテル」は「蒲郡ホテル」として1934年に開業、その当時の建物をほぼそのまま今でも使用しています。
今や日本は空前とも言える「インバウンド」ブームですが(まぁ諸々の事情で色々とアレな感じになっちゃってますが)、1930年代にも貿易赤字解消・外貨獲得のために日本政府がインバウンドに真面目に取り組んだことがあります。
1930年には日本で初めての外客誘致を扱う政府機関として国際観光局も設置されましたが、ここで大きな問題となったのが「ホテル」でした。今でこそ「ジャパニーズスタイルリョカン」とか訪日客も喜んで泊まってくれますが、その当時に日本まで来ようなんて人は欧米の金持ちくらい。ちゃんとした西洋風のホテルにちゃんとしたフレンチを供せるレストランくらいは必須アイテムでしたが、そんな宿泊施設なんて当時の日本には数えるほどしかありませんでした。「ホテル」と名乗りながら実態はゴリゴリの旅館、というのも結構あって、外国人とトラブルになったケースもあったようです。
そこで、政府が低金利で融資を行い、日本各地に「ちゃんとした”ホテル”」を作ろうぜ!というコトになりました。結果として、この制度で13のホテルが誕生。名古屋の「名古屋観光ホテル」や伊豆の「川奈ホテル」などとともに、この「蒲郡ホテル」も生まれたわけです。ちなみに、このとき開業したホテルは1つを除いて今でも営業していますが、開業当時の建物が今でもそのまま使われているところは意外と少なく、実は「蒲郡クラシックホテル」は割と貴重な存在だったりします。
このホテル、設立には名古屋の老舗繊維商社「タキヒヨー」が関わっているそうで。その後、プリンスホテルの傘下に入りましたが、今では呉竹荘グループの運営になっています。
では到着。今回はマイカーで移動しました。ホテルは蒲郡駅から少し離れた丘の上にあり、駅からのバスなどの便もそれほど良くなかったので…。
なかなか歴史を感じさせるエントランス。ドアマン常駐です。
エントランスから入ると吹き抜けの空間がお出迎え。
ロビーは重厚さを感じさせます。いいぞいいぞ。フロントデスクの奥には小さなショップがありました。
チェックインを済ませるとお部屋までご案内です。エレベーターも雰囲気あります。
階段室の窓ガラスも美しい。
今回アサインされた部屋は3階でした。
折角なので、三河湾が見渡せるというオーシャンビューのツインルームを取りました。
この部屋、ちょっと変わった構造になってます。入室するとバスルームと小さなリビングルームのある部屋があり、ドアを介して隣にベッドルームがあるという、スイートルームっぽい感じなんです。まぁリビング部分はそれほど広くはないですが…。テレビはこことベッドルームと2台設置。
バスルームは標準的な感じかな。ちゃんと温水洗浄便座つき。
アメニティにはホテルのロゴが入っています。
こういう雰囲気を楽しむ感じのホテルでは、アメニティとかに手を抜いて欲しくないですよね。この辺はカンペキです。
部屋の窓から見える三河湾の風景がコチラ。今では蒲郡を「風光明媚な観光地」と思う名古屋人はそんなに多くないような気がしますが、こうして見ると結構イケてません? アングルによっては工場とか造船所とか見えちゃって少し興ざめだけど、昔はもっと自然の風景があったはずで、これならココに外国人を呼ぶホテルを建てようと思うのも納得です。
ホテルの周囲には遊歩道があります。時節柄、桜が綺麗。
遊歩道からはホテルの外観も眺められます。この時代に流行した、洋風建築に和風の屋根を乗せる典型的な「帝冠様式」ですが、ちょっと「お城」っぽい。
ホテルの敷地からは竹島への近道となる石段が。
この石段、この上にある御鍬神社への参道なんですね。
竹島散策でもしてみます。
長い橋を渡って島まで来ると、高台にあるホテルがよく見えます。
こうして見ると、周囲とうまく調和してる感じがします。
竹島散策から戻るとちょうど夕暮れ時。2階のラウンジ「アゼリア」で一休み。
こちらでは夕方6時まで「ハッピーアワー」としてドリンク類の一部が半額で頂けます。ホテルオリジナルの「蒲郡サンセット」をお願いしました。蒲郡らしいみかんジュースとラムを使ったレシピで、殆どジュースみたいな感じですが、ラムベースだけあってしっかりアルコールは効いてます。
ハッピーアワーではプチオードブルも500円で提供とお得なので、こちらも戴いちゃいました。
ラウンジのテラス席からは夕日が綺麗でした。
自室に戻る頃にはすっかり夜。窓から見る三河湾の夜景も悪くないね。
夕食はメインダイニングで、フレンチのフルコースです。バルコニー側の窓に面した席を用意してくれました。
テーブルにセットされたプレートに描かれているのはこのホテルの姿。
これが本日のメニューです。
飲み物ですが、スパークリングワイン+白ワイン+赤ワインをグラスで1杯づつソムリエお任せで提供、というのが3200円でメニューにあったので、こちらをお願いしました。
まずはアミューズ。地元産メヒカリだそうです。
前菜は「雲丹のフラン 絹姫サーモンのスモーク」。「絹姫サーモン」とは愛知県のブランド魚らしく、産地は奥三河で、ホウライマスとアマゴを掛け合わせた品種だそうです。そんなのあったのか愛知県。
ここで白ワイン登場。
スープは南瓜のポタージュでした。
魚料理は「白身魚とオマール海老のキャベツ包み トマトソース」です。
魚料理の後にソルベが出てくるあたり、「ちゃんとした」感がありますね。柚のシャーベットでした。
ワインは白から赤へスイッチ。今日のセレクションは全部フランス産でした。
肉料理は「国産牛フィレ肉のカツレツ マッシュルームソース」です。この牛のカツレツはホテルの看板料理となっており、「蒲郡ホテル」時代に出されていたものを再現したんだそうです。このホテルは川端康成や志賀直哉といった文豪がよく泊まっていたそうで、おそらくそんな皆様も楽しんでいた味なのでは?だそうで。カツレツとはいえ衣は極薄、程よいシーズニングで上質なステーキを食しているような感じでした。
デザートは「ラズベリー風味のヌガー」。ナッツなどの入ったアイスクリームみたいな感じでした。この後は食後のコーヒーで一服、全般的に「ちゃんと真面目な美味しいフレンチ」という印象で、大変満足です。
一晩明けて、外は快晴。窓から見える竹島が映えます。
朝6時半から7時半まで、2階のラウンジではセルフサービススタイルですがコーヒーと紅茶のサービスが行われます。
朝食もメインダイニングで戴きます。また眺めの良いバルコニーの席でした。
メインダイニングの中の席も雰囲気いいんですけどね。
まずはサラダ・ヨーグルト・フルーツのプレートから。
バンはこんな感じでサーブされます。ロールパンはみかんジュースを練り込んだものだそうですが、コレが特に旨かったです。頬張るとホントにみかん風味爆発、というくらいでした。
メインの卵料理は目玉焼き・スクランブルエッグとオムレツから選べますが、ホテルのお勧めはオムレツ。確かにこれが絶品です。中身が蕩け出さない、絶妙なふわふわ加減は「さすがホテルダイニング」です。
すっかり堪能してしまった「蒲郡クラシックホテル」、1泊2食で2万円台となかなかお値打ちな感じです。これはクラシックホテル巡り、ますますハマりそう…。ま、「日本クラシックホテル友の会」のパスポート買っちゃったけど。