JALの修行僧にとって「聖地」があるとすれば、それは「コウノトリ但馬空港」かもしれません。JALの場合、マイレージの上級会員資格を取るには飛行距離などに応じて加算される「FLY ONポイント」を貯めるだけでなく、「搭乗回数」を稼ぐという手もあります。この「搭乗回数を稼ぐ」ためによく使われているのが「大阪/伊丹~コウノトリ但馬」路線だったりします。伊丹空港からの飛行時間は30分ほどとお手頃で、運賃もだいたい片道8000円くらいが相場と、比較的安価。おかげで「但馬でそのまま折り返す」という旅客が決して珍しくありません。自分もやってみて「え!こんなにみんな”乗るだけ”目的なの?」とかなり驚きました。
とはいえ、折角行ったのに空港でそのまま折り返しを続けるのもちょっと勿体ない。そこでいろいろ調べてみたら、なかなか面白そうなホテルを見つけてしまいました。
それがコチラ、「オーベルジュ豊岡1925」です。豊岡駅から歩いて10分弱くらいの市街中心部に位置し、1934年に建てられた「兵庫縣農工銀行豊岡支店」をリノベーションした施設になります。どちらかといえば宴会や婚礼もできるレストランにホテルが併設されているといった感じで、客室はわずか6室しかありません。なお「1925」というのは豊岡が被害を受けた北但大地震が発生した年から取ったそうな。豊岡が地震被害から復興に向けて動き出し近代都市になった象徴的な年号、という位置づけとか。
アーケード側の玄関はレストランへの入口。
ホテルへのエントランスは側面に設置されています。
中に足を踏み入れると、いかにも昭和初期のレトロなオフィスビルといった趣で出迎えてくれます。
その昔は銀行のメインロビーだったフロアにフロントデスクがあり、チェックインはこちらで行います。
チェックインを終えてお部屋へ。
今回手配したのはシングルルーム。室内はシンプルです。
部屋の片隅にはデスクを設置。なお、「日常の喧噪を離れて過ごせるように」というコンセプトから、客室内にはテレビと時計はありません。
バスルームはシャワーブースと洗面台、お手洗いを設置。
アメニティも充実しています。
「ウェルカムスイーツ」が付いてくるプランだったので、部屋に落ち着いた頃にプレートが運ばれてきました。
部屋でちょっと寛いでから、館内を探索。フロアの丸いショーケースは「カバン」と「お菓子」の街であるという「豊岡」を表現したディスプレイです。
このホテルには宿泊客専用のラウンジも用意されています。
このラウンジではセルフサービスでドリンクが頂けますが、アルコール類も豊富に揃っていました。ウイスキーの「知多」とか置いてるぞ。滞在中はいつでも使えます。
「オーベルジュ」なので食事もウリ。夕食はこの奥、銀行時代には「応接室」として使われていた小部屋でサーブされます。この広いメインフロアで食べるんじゃないのね。
その昔はここで大口顧客との融資の相談とかしてたんだろうなぁ、という場所でのフレンチディナーが始まります。
飲み物は地場のものを…と「城崎ビール」を頼んでみました。「カニビール」というのもあったのですが、ちょっと試す勇気がなかった…。
1皿目は万願寺唐辛子のムースとトマトのジュレ。
2皿目に登場したのは鶏のマリネのサラダ。野菜は地元産を使っているそうです。
3皿目には南瓜のポタージュがサーブされました。
お次は魚料理。甘鯛の包み焼きです。
フィルムを開けるとほくほくの甘鯛があらわれました。
肉料理は但馬牛のグリル。まぁ肉が溶けるわ。
デザートに出されたのは桃のコンポートとジュレ。この桃も豊岡産です。このディナー、最初から最後まで「地のモノ」に拘った上品なお味で、充分堪能させていただきました。
食後のコーヒーでほっこり。
コーヒーとともにお茶菓子が出てきましたが、こんな気の利いたプレートでサーブされました。片隅に描かれたカクカクなヤツは豊岡のゆるキャラ「玄武岩の玄さん」だよね、多分。
食後は少し外をお散歩。
夜の雰囲気もなかなかいい感じ。なお、周囲には飲食店は少しありますが、コンビニは駅の方まで戻らないとない模様。駅前に大きなスーパーがあるので、必要なモノはそちらで買ってから来るのがいいかも。
朝食もディナーと同じお部屋で。
朝食にはメニューカードが用意されていました。
まずはラズベリー入りの野菜ジュースからスタート。
朝食はプレートで運ばれてきます。ジャムも手作りのようで、バラのジャムとかあってなかなかユニーク。
パンも地元で人気のベーカリーから取り寄せたものだそうですが、確かに旨い。
ではチェックアウトして空港へ向かいます。このホテル、なんと目の前からコウノトリ但馬空港へのバスが出てるので、修行旅にはピッタリ。
なお、「オーベルジュ豊岡1925」の向かいにある旧豊岡市役所も見事に保存されています。旧館の背後にテイストを合わせた高層棟を配置し、左右はグラスウォールで存在感を落としたウイングを張り出させることで、旧館のレトロな雰囲気を壊さず「独立した建物」のように見えるよう再開発されています。こちらも一見の価値あり。
市役所側から眺めた「オーベルジュ豊岡1925」。この近さから、市役所の別館として使用されていたこともあったとか。いやぁ、それにしても豊岡にこんなステキなホテルがあったなんてねぇ…。