へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

三度目の正直? 「おれんじ食堂」にやっと乗れました。

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熊本県と鹿児島県にまたがる第三セクター肥薩おれんじ鉄道」が運行する観光列車「おれんじ食堂」にやっと乗ることができました。

 

実はこれ、今年3回目のチャレンジ。1回目はゴールデンウィーク中で確保していたのですが、新型コロナ感染拡大に伴い4月に緊急事態宣言が発令されたため、「おれんじ食堂」も運休の決定が下されました。このときは直接に電話で運休の連絡があったのは勿論、郵便でも運休のお知らせとお詫びが届く丁寧っぷりでした。で、2回目が8月下旬なんですが、これは7月の熊本豪雨により肥薩おれんじ鉄道も被災、運休区間が発生してしまいました。「おれんじ食堂」も影響を受け、運転区間を短縮することに。このときも確認の連絡を頂いたのですが、また復旧したときに再チャレンジしようと考えて取りやめ、という判断にしました。

 

トンネルが土砂で埋まるような激しい被災状況だったので当面再開は難しいだろうな…と思っていたのですが、11月から全線での運転再開が決定。同時に、「おれんじ食堂」もフルスペックでの運転再開のアナウンスがありました。しかも、「GoToトラベル」支援対象となる日帰り旅行パッケージも用意させることに。この「おれんじ食堂」、看板みたいな扱いの「ランチプラン」だと実は21,000円もします。そのため1回目・2回目の時はもう少しお値段の安い「サンセット便」を選んでいたんですね。それが今回は新八代から川内への「ランチプラン」片道に加えて川内~八代への片道乗車券、川内駅のショップでお土産等と引き替えられる500円分のチケットがついて22,000円とした上で、「GoToトラベル」で7000円の補助金+3000円分の地域共通クーポンがついて実質12,000円で乗れることになるので、こりゃ今がチャンスでしょ、と確保した次第です。

 

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前日夜にANA(といってもスターフライヤー運航ですが)で福岡に入って一泊、そこからのんびり在来線で新八代へ移動します。

 

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新八代駅には「おれんじ食堂」の発車10分前ほどの到着だったのですが、降りたホームには何かそんなステキな列車がこれから出るよ!みたいな華やいだ雰囲気は一切ありません。ここでよかったんだっけ?と若干不安になりながら改札のJR駅員さんに訊いてみたら「改札前のコンコースで受付してますよ」とのこと。あ、確かにいました! この新八代駅は新幹線から在来線への乗り継ぎでは改札を一旦出て移動しないといけないので、大方のお客さんにとってはココが一番解りやすい場所かもしれません。

 

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発車5分ほど前に、「おれんじ食堂」が入線してきました。

 

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先ほど受付にあったプレートはドアサイドに移され、いいフォトスポットに。

 

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車内は「ザ・水戸岡デザイン」って感じです。まぁ雰囲気はいいんですよね。

 

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11:10、定刻で新八代を発車。指定された座席にはランチョンマットにゴム製のコースターなどがセッティングされていました。列車の揺れなどで滑ることがあるので、食事や飲み物などはマットの上に置くようアナウンスがありました。

 

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八代駅では隣のホームにはくまモンラッピングの車両が。「おれんじ食堂」に先行して運転する各駅停車として発車していきました。アテンダントさんによると、通常よりもかなりゆっくり速度を落として発車していきましたね、だそうで。サービスしてくれたようです。

 

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新八代を出ると、おもてなしの始まりです。まずは温かい緑茶がサーブされました。

 

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肥薩おれんじ鉄道の沿線では多くの柑橘類の栽培が行われていますが、八代の辺りでは「ばんぺいゆ」が名産。かなり大きな果実なので、窓からも木に大きな玉がいくつもぶら下がっているのが見えます。

 

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次の停車駅は日奈久温泉。ここは種田山頭火が「帰りたくないくらいイイところ」と賞賛したことで知られ、駅にはこんなものも。

 

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でもやっぱり熊本といえばくまモンの方が強いみたいです…。これは今春にクルーズ船受け入れ港として「くまモンポート八代」が整備されたことにあわせ、八代市が市内各地に設置しようと用意した49体のくまモンの一つ。まぁ折角造ったのにインバウンドどころかクルーズの再開も見通せないので、これを海外からのクルーズ客が目にするのは随分先の話になりそうですが。

 

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日奈久温泉発車後、「日奈久ちくわ」が提供されました。

 

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ここでドリンク類のオーダー伺いがきました。この列車、コーヒーに紅茶に緑茶、オレンジジュースは無料で頂けますが、アルコール類や一部のソフトドリンクは別料金扱い。

 

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ただ、そのお値段は意外とお手頃。ビールやカクテルなどは500円くらいから用意されています。

 

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熊本や鹿児島という土地柄でしょう、焼酎のラインナップが豊富です。

 

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そのほかワインやウイスキーなども。全般的に品揃えが凄いですわ。よくこんな載せてるな。

 

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とりあえず地ビールからはじめてみます。

 

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ここでマドレーヌも出てきました。それならビールの前に紅茶でも頂いておいたほうがよかったかしら。

 

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日奈久温泉を出ると、線路は暫く海沿いを進みます。こんな路線がその昔は特急が毎時1本は行き交う幹線筋だったっての、よく考えたら凄いな。

 

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この列車、いろいろ「お土産」が出てくるのも特徴です。お持ち帰りとして和紅茶のティーバッグを頂きました。

 

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このお土産を持ち帰るための紙袋も予め用意されてるので安心です。一応、おれんじ食堂のスタンプも押されてます。

 

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ビールのあとはオレンジジュースをオーダー。沿線の柑橘類をブレンドしたものだそうです。

 

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水俣へ入る手前、車窓からは重盤岩が見えました。

 

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ランチの提供は水俣駅発車後。その前にテーブルセッティングが行われました。

 

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こちらが本日のメニュー。アミューズに前菜、魚料理に肉料理と用意されたフルコースになっています。

 

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水俣駅、ここで暫く停車時間をとります。

 

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乗車の際にこんなクーポンを頂くのですが…。

 

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これを持って行くとホームでお土産と引き替えられるんです。

 

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地元のお菓子の詰め合わせを頂きました。

 

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停車時間の間、ホームでは料理の積み込み作業が行われています。

 

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水俣駅停車中、上り車線には787系電車が入線してきました。これはJR九州の新しい観光列車「36ぷらす3」のための試運転なんだそうです。そういえば「36ぷらす3」は5日間に分けて九州を一周するルートで組まれていますが、毎週木曜日のルートは博多から鹿児島中央まで「肥薩おれんじ鉄道」を経由する予定になっていました。ところが豪雨被害により木曜ルートの運行は見合わせたまま他のルートから運転開始となっています。これが11月中旬から木曜ルートの運転開始も決定し、そのための準備が行われているようです。今日はフツーの787系ですが、明日以降は「36ぷらす3」の車両による試運転に移行するらしいので、この風景は結構レアかも。

 

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水俣駅発車後に始まったランチ、最初の一品は「水俣有機野菜の収穫体験2020秋」。

 

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まるで畑の土の上に野菜が並んでいるようですが、この黒いブツはツナとオリーブオイルを4時間かけて煎ったドレッシングとのこと。手間かけてますね。

 

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食事と一緒に何か飲み物を。メニューの内容から行けばワインとかの方が合うんでしょうが、焼酎のコレクションが凄いので試してみたくなります。そこでアテンダントさんに「今日のメニューにあう焼酎でお勧めってありますか?」と訊いてみました。「あ、それなら癖のあまりない呑みやすいものがいいですね」とか鹿児島県長島町の芋焼酎「島娘」を勧められました。「XX娘、って名前の焼酎は女性向けに飲みやすくしたものが多いんですよ」だそうで。確かに芋の風味はありながらスッキリ軽めで飲み口はよく、洋食にも合う味わいでした。あとで調べたらこの「島娘」って長島町内での限定販売になってるじゃないですか!

 

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このあたりで列車は熊本と鹿児島の県境を越えます。この小さな橋は「境橋」、1883年にこの境界線上に初めて架けられた橋とのこと。熊本藩薩摩藩の境界は以前は固く閉ざされ、川を越えるのも石沿いに飛んでいくしかなかったんだとか。

 

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2皿目は「長島産鮮魚のカルパッチョ 水俣甘夏ドレッシング」。レモンが添えられていますが、これもそのまま食べられます。

 

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ここで出水駅に到着。このあたりは鶴がたくさん見れることで有名らしく、確かにここまでの沿線にも何羽か鶴がいるのを見ることができました。

 

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ここでも停車時間を利用して食材の積み込みが行われます。アミューズとオードブルの使用済み食器もここで降ろしている様子。この列車、車内に厨房のような設備がないことを、途中停車駅でタイミングを合わせて料理の積み込みを行うことでカバーしているようです。うわー、これだけの手間かけてれば「片道21,000円です」ってお値段も仕方ないって気がするよねぇ。

 

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では出水駅を出発です。

 

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出水駅発車後に出てきた3皿目は「長島岩塚水産 鮃のフリカッセ」、温かい状態でサーブされます。

 

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包みを開けるとガーリックも効いた香ばしい香りが立ち上ります。バゲットはソースに浸して食べると止まらんぞ。

 

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ここで「八代産 梨のお口直し」が出されます。魚料理と肉料理の間の口直しはソルベなどが出ることが多いですが、さすがに車内では氷系を出すのは難しいのか、梨のピューレのような感じでした。これはこれで梨の風味が感じられて旨かったですけどね。

 

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で、お次は肉料理。「阿蘇の放牧牛 赤牛のグリエ COCORO味噌ソース」です。これも温かい状態でサーブされ、焼き加減もちょうどいい感じでした。車内で調理できるわけでもないのに、このコンディションで出せるのは相当いろいろ工夫してるはず。このCOCORO味噌って何ぞや?と思ったら、長島町の漁師さんが手作りしている麦味噌だそうで。このへんの食材のチョイスとかも凝ってるよね。

 

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次も焼酎で、と思ってメインの肉料理にあうものでお勧めをいただきました。少し味わいがしっかしりたものがいいですね、と薩摩川内市の「神の蔵」がお勧めとのことで、そちらにしています。アテンダントさんの商品知識はかなりハイレベルっぽいです。

 

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肉料理を平らげたタイミングで阿久根駅に到着。

 

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この駅も「おれんじ食堂」と同じく水戸岡鋭治デザインでリニューアルされています。

 

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駅にはショップやレストランも併設され、ちょっとした交流センターのような位置づけになっている様子。待合室もオシャレ。

 

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あと阿久根駅といえば駅前のコレを見ておきたかったんです。2008年にいわゆる「ブルートレイン」が廃止になった際、ちょっとしたブルトレブームが起きていました。そのなかで、ブルトレの車両を譲渡してもらって宿泊施設などに使おうという動きがいくつか出ており、その一つがこの阿久根のブルートレインでした。地元のNPOが運営主体となって2009年にオープンしましたが、あまり経営がうまくいかなかったようで資金難から数年で閉鎖。その後はここで残念な姿をさらしているような状況になっています。ところが昨年頃から香川のうどん屋さんがこの車両を四国に引き取って宿泊施設として再利用する活動をはじめ、クラウドファンディングで必要な資金も集めることが出来た様子。その後の動きが気になっていたのですが、移設についてはこれから着手、みたいです。二人用個室の車両とかここにしか残ってないんで、今度こそは安住の地を見つけられればいいんですが…。鉄道車両の保存ってメンテナンスがかなり大変なんですが、そのあたりをあまり考慮せずに動いたようなケース、割とあるんですよね。

 

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車内に戻ると、ナプキンがちゃんと畳まれて用意されていました。

 

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ここでデザート、「2種のフルーツテリーヌ」です。

 

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アイスコーヒーと一緒に頂きました。いやぁ、非常に満足なコースでした。

 

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阿久根を出ると車窓から見えるのは牛が浜海岸。ちょっと見にくいですが、この岩の上には鳥居がたってます。

 

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薩摩川内市に入ったところで見えてきたのが人形岩。

 

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ここで最後の途中停車駅、薩摩高城駅に停車です。カーブのところに駅があり、線路の傾きが強いので車両も随分ナナメに傾いて停まるため、ドアには渡し板がかけられました。

 

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乗車時にもらったお土産チケットの2枚目の引き替えはココで。

 

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サブレを頂きました。

 

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この駅は少し歩いたところから海が眺められます。駅からここまでの歩道は肥薩おれんじ鉄道の社員さんが自ら整備したものなんだそうです。

 

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川内川を渡ると、大きな街が見えてきます。およそ3時間の列車の旅もそろそろ終了です。

 

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終点、川内駅に到着です。

 

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到着後に向かったのは駅併設の物産館。

 

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このプランの特典として付いていた「駅待チケット」の引き替えのためです。実はこれ、いろいろ選択肢があって、駅近の温泉入浴とかもできたりするんですよね。

 

ekimachi.satsumasendai.site

 

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今回はすぐに熊本方面に折り返すことから、スイーツのセットを頂きました。紅はるかプリン旨かった…。

 

「おれんじ食堂」、なかなかのお値段ですがレストラントレインの先駆けとして今でも高い人気を保っている理由がよくわかりました。食事やホスピタリティのレベルは確かにかなり高いですねぇ。