檮原町にはあわせて6軒の隈研吾建築があります。そのうち2つが昨晩泊まった「雲の上のホテル」と、それに隣接して2010年に完成した「雲の上のギャラリー」ですが、2番目が2006年完成の「梼原町総合庁舎」です。
土日でも館内の見学が可能。エントランス部分は大きなホールになっており、窓面は解放も可能な構造で「半屋外の広場」として設計されたものだそうです。
3番目は2010年に完成した「マルシェゆすはら」。1階が地場品を中心としたショップ、2階以上がホテルとなっています。表通りに面したファサードを覆うのは萱。この地域では峠を越えた旅人を萱葺きの茶室で迎える習慣があり、それをモチーフにしたものです。萱葺きのピースは回転が可能で、外気の取り入れも可能。
ショップ部分は3階分の吹き抜けに。宿泊施設は「雲の上のホテル別館」として営業中です。
そして檮原町最新の隈研吾建築が「雲の上の図書館」と「YURIRIゆすはら」、2018年の完成です。
外観はこれまでのものに比べると「大人しい」印象ですが、内部に入るとその印象は一変。複雑な木組みの屋根が圧倒的なビジュアルで迫ってきます。ここだけ見たら「代官山のTSUTAYA」とか言われても信じそうでしょ?
この図書館、建物だけじゃなく中身も魅力的。人口3000人ちょっとの山奥の町とは思えないほど蔵書が充実しており、地元や高知に関する書籍類も数多く揃い、陳列方法も一工夫あるな、という解りやすさがありました。本の紹介コーナー等も多く、司書さんがしっかり仕事していることが伝わってきます。こんな図書館作るのって檮原町って油田でもあるのか?って感じですが、「定住人口を増やすためには図書館などの文化施設が必要」ということを町長が地域に説明して廻り理解を得て実現したものだそうですから、なかなか凄いもんです。
図書館に隣接して建つのが「YURURIゆすはら」。「複合福祉施設」とのことですが、要は町営の老人ホームなどが入ってるところ。有名建築家の建物で過ごす老後かぁ…。
外観は隈研吾らしく「木」を前面に押し出していますが、これまでの檮原の建築に比べると「外側に木の板を張りました」感が強いような…。
さて、それにしても何故こんな山奥に隈研吾の建築が多数あるの?と誰でも不思議に思うはず。その理由がこの芝居小屋「ゆすはら座」です。高知県唯一の木造芝居小屋で、戦後すぐの1948年に檮原公民館として建てられました。この芝居小屋の保存運動に、独立して間もない頃の隈研吾が係わることになったことが大きなきっかけです。
独立初期の隈研吾の建築は「ドーリック南青山ビル」や「マツダM2ビル」のようなバリバリのポストモダン。それが「ゆすはら座」に出会ったことで「木」を生かした建築を手がけるようになったようです。新聞のインタビューで「新国立競技場の原点は梼原」とまで言ってますよ…。
「ゆすはら座」の中に足を踏み入れると、戦後すぐで資材も充分でなかった時代だと思うのですが、木材の並べ方だけで造られた天井の意匠など、確かに「これに影響を受けた」ということが理解できるような気がします。
「ゆすはら座」の近く、総合庁舎の向かいにあるのが「梼原町立歴史民俗資料館」。
ここにも小規模ですが隈研吾に関する展示室がありました。
ここでも梼原の6つの隈研吾建築を紹介していますが、各建築の図面や隈研吾自身の活動なども含めての展示になっていました。
もともとは梼原の歴史や生活を紹介する博物館なんですが、そちらの展示も意外と充実。歴史についてはかなり最近までの流れを紹介しているのですが、既に1950年代くらいに「もう鉄道の時代じゃない、マイカーの時代が来るから道路整備だ」みたいなことを町長が言い出してたりするのが凄いかも。なお、「雲の上のホテル」は総合庁舎などがある町の中心部からはかなり離れているため、建築巡りをするのであればクルマは必須ですね。
梼原からは宇和島へと抜けるルートで帰還。その距離およそ50kmと、松山や高知よりもぐっと近いんです。国道197号から国道320号経由となりますが、全線に渡って良く整備された2車線の快走路が続きスムースに移動できました。レンタカーも宇和島で返却しましたが、松山空港で借りているので「同一県内」として乗り捨て料もかかりませんでした。梼原に行くなら宇和島からのアクセスがお勧め!と言いたいところですが、宇和島へのアクセスがそんなに便利じゃないんだよね。
「アンパンマン列車」での運転でしたが、こちらは車内の天井にキャラクターのステッカーを少し貼っている程度。JR四国のアンパンマン列車は「どこもかしこもアンパンマンだらけ」な車内のやつもあるからなー。
八幡浜駅で下車します。
ここでランチ。駅にあった「駅なか浜っ子」で、八幡浜名物の「ちゃんぽん」を頂きました。こちらの「ちゃんぽん」、肉や野菜がどっさり載っているのは「長崎ちゃんぽん」に近いビジュアルですが、スープが醤油ベース。これはこれで少しあっさり目で悪くありません。