今日はひたすら南下して襟裳岬へ向かいます。
宿を出て国道38号を南下。狩勝峠までやって来ましたが雪交じりのお天気で、本来なら一望できるはずの十勝平野は雲の向こう、でした。
峠から下る途中、ちょっと寄り道。
「旧狩勝線ミュージアム」、ここには以前は列車ホテルとして使われていた20系寝台客車が3両、SLとともに保存されています。
ここは根室本線の旧線で新内駅があったところ。旧線時代はこのあたりからの眺めは「日本三大車窓」の一つと言われていたそうですが、1966年に勾配緩和のためにトンネルが掘られ、こちらは廃線となってしまいました。「旧狩勝線を楽しむ会」というNPOが管理しており、通常は車内の見学もできるのですが、昨年と今年は新型コロナのために資料館も含め閉館中。
ここで特に貴重と思われるのが、この「ナロネ22」。2段の開放式A寝台と、一人用個室A寝台の合造車です。東京と博多を結ぶブルートレイン「あさかぜ」に投入されましたが、大卒初任給が1万円台だった時代に片道9千円くらいしたらしいので、超高級グレードでした。実際、会社経営者や政治家などが主な利用者だったとのこと。実は8年ほど前にも訪問したことがあり、その時は車内をじっくり見せて貰いました。またそんな機会があれば…と思うのですが、見る限り外装なども保守はされている様子。まだ暫くは健在、という印象です。
そのまま下り、十勝らしい風景の中を走って行きます。
次に立ち寄ったのは「柳月スイートピアガーデン」です。帯広では「六花亭」と双璧をなす(と自分が勝手に思ってる)菓子店「柳月」が、道東道の帯広音更IC近くに構える工場兼直売店です。「柳月」ってチョコのかかったバームクーヘン「三方六」で有名ですね。最近は新商品「あんバタサン」を猛プッシュ中みたいですが…。
ここでしか買えない商品もあったりして、イートインができるカフェもあったりします。そちらでの看板商品「きなごろもソフト」で一休み。十勝の菓子店あるある?なのか、こちらでも無料のコーヒーサービスがあります。
こちらは工場見学もできたりしますが、恐らく一番の目玉は「三方六のお買い得品」販売かもしれません。「三方六」を作るときのバームクーヘンの端っこの詰め合わせを数量限定で格安で販売しているんです。ただし、開店30分くらい前には並んで整理券を貰わないと買えないものらしく、この日も全然ムリな筈だったのですが…。10時頃突然、店内で「これからお買い得品の販売しまーす」のかけ声が。案内されるままに並んだら買えてしまったのです。600円でおよそ1kgの切れ端、ちょっといちご味のチョコがかかってました。この後、道中のおやつとして大活躍してくれました。
帯広の市街地を抜けて、旧広尾線の愛国駅跡へ。広尾線の廃線はまだ「国鉄」だった1986年と既に30年以上経過しているのですが、まるで現役の「駅」と言われても信じそうな佇まいです。
駅舎内は広尾線に関する展示が多数。
ホームもほぼそのままの状態で保存されており、SLが一両展示されていました。廃線から随分経つのに、こんなに廃駅が地域で大切にされているのって、なんか凄い。
愛国駅跡から暫く南に進んだところにあるのが幸福駅跡、「幸福交通公園」です。
ここも駅舎が残され、ホームもそのまま。ディーゼルカーのキハ22が2両も展示されていたりします。
駅舎前にはお土産物屋が軒を連ねます。そう、ここは完全に「観光地」。1970年代に先ほどの愛国駅とあわせ「愛国から幸福へ」の片道乗車券や幸福駅の入場券がブームになり、広尾線が廃線となり肝心の愛国駅も幸福駅も既に「駅」ではなくなっても、レプリカの乗車券はいまだにお土産として根強い人気となっているようです。なおこの「幸福」という駅名、このあたりが最初「幸震」という地名だったところ福井県から多数移住してたので「幸」と福井の「福」を取って地名を改めたから、だそうです。
幸福駅跡は無料の帯広広尾道、幸福ICのすぐそば。ここから現時点での終点、忠類大樹ICまで使いましたが、酪農地帯を高架で抜けていくルートなので非常に「北海道らしい」風景が楽しめる路線でした。ここで昼食、広尾の市街地手前にある「菊池ファーム」にお邪魔しました。
この「菊池ファームカフェ」は牧場の直営のお店。
ここで育てた牛肉や牛乳を使ったメニューが頂けます。
まずは牛乳を。濃くて甘いね。
ローストビーフのサンドイッチがよかったのですが残念なことに今日は品切れ。ハンバーガーにしましたが、これもパティがジューシーで旨かったからいいや。
昼食の後は「広尾町海洋博物館・郷土文化保存伝習館」にやってきました。
実はここにも旧広尾線に関する展示コーナーがあるんですよ。以前は旧広尾駅跡に作られたバスターミナルの中にあったようなんですが、こちらに移転したようで。ただ、この博物館の場所がとても公共交通では来れないような場所なんで、クルマで動くときくらいしか訪問のチャンスがなかったんです。それほど広くはないのですが、駅名標や廃止時の記念切符など、コレクションは豊富に持っているようでした。
この博物館、ほかにも広尾町の歴史や漁場に関する展示もあったり。
「黄金道路」に関する紹介も。
ここ広尾町出身の横綱、北勝海に関する展示も充実。あ、このお方って今の相撲協会の理事長じゃないっすか…。
画家の坂本直行の展示室まで。六花亭の包装紙のイラストを手がけた方ですね。なんでここに?と思ったら、広尾町に開拓民として入植していたことがあるんですね。
で、何故か坂本龍馬。どういうこと?と思ったら、なんと坂本直行は坂本家の末裔、坂本龍馬の甥の孫にあたるんですと! 坂本龍馬本人が北海道に来たことはなかったようですが、坂本家が北海道に渡り広尾とも縁を持つようになった由来などが、ここに展示されていました。
国道336号で広尾の市街地を抜けたあたりから「黄金道路」が始まります。1934年に8年かけた建設の末に開通しましたが、過酷な地形を通したことから篦棒な建設費がかかり「まるで黄金を敷き詰めたようだ」ということで「黄金道路」と呼ばれるようになりました。
海ギリギリのところに道路が敷かれ、山が迫るところは覆道も。高波や落石での通行止めが非常に多いことでも有名らしいのですが、トンネルで線形改良が図られている区間もかなり見受けられました。
まぁこんな険しい地形のところですからね…。
そしてついに襟裳岬に到達しました。広尾から様似までのバスに乗って通過したことは何回かあったのですが、ここで降りたことはなく、初訪問です。
襟裳岬の先の方までは遊歩道が。
この岩場にはゼニガタアザラシが生息しているようなのですが、肉眼では確認できず。併設の「風の館」では望遠カメラでこの辺りを見れるモニターがありましたが、そちらでは見えたんだけどな…。
お土産物屋も営業中。結構賑わってました。
ここからは太平洋沿いに北上していきます。
途中、旧日高本線の様似駅跡に寄ってみました。日高本線は2015年の高波被害で鵡川から様似までが不通となっていましたが、復旧費用が高額になることもあって、結局鉄道の運行再開は叶わぬまま今年4月に正式に廃線となってしまいました。ちょうど昨年の1月、ここの代行バスに乗ってました。
駅舎の中には廃線を惜しむメッセージが掲示されていました。この駅舎自体は観光案内所も兼ねていますし、JRバスのきっぷ売り場も残っているようですので、このまま残され活用されそうです。
もう5年以上列車が走らず錆びた線路は、踏切も廃止されたので線路側に「立入禁止」の掲示が。
そろそろ陽が落ちる頃。
今日は静内で宿泊。静内駅を見てみることに。
ここ静内駅は鉄道の駅とバスターミナルを併設したような施設になっているのですが、駅側のほうは既にすっかり面影がなくなっています。
ここにも廃線となる日高本線のメッセージカードなどが貼り出されていましたが、なんだか大人しめ。既に30年以上前の話なのに未だに「思い出」を大事に守ってる印象のあった旧広尾線に比べると、なんか「あっさり」しすぎてません?なんか冷たくない?という気が…。まぁ日高本線については災害復旧の費用負担や復旧方針で散々JR北海道と地元自治体、加えて北海道庁と大もめした結果、ようやく廃線が決まった…みたいな経緯でもあるので、地元としてもただ「惜しむ」という存在ではないのかもしれません。人気絶頂のアイドルが引退すれば「伝説」になるけど、落ちぶれてから引退すると「あの人は今」扱いになっちゃうとか、そんな感じなのかしら。
このパンフレットラックの並んだ一角、この裏手のスペースは以前は売店だった筈。やっぱり色々厳しかったのかな…。