へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

スゴイ列車でスゴイ庭に行く旅、その1:化け物ディーゼル特急で日本一へ。

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スゴイ列車でスゴイとこに行きます。

 

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早朝の名古屋から快速列車で大垣、そこから米原行きに乗り換えて移動。

 

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米原からは新幹線「ひかり」で一区間だけ乗って京都で下車しました。

 

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京都からはここ始発の特急「スーパーはくと」に乗車。新幹線と在来線特急を乗り継ぐと、在来線の特急料金が半額になる「乗継割引」という制度があるので、ただ京都から特急に乗るよりも米原から新幹線に乗ってきた方がトータルで安くなるため、こんなヘンなルートになった由。

 

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特急「スーパーはくと」が5両編成で入線してきました。このスマートな車両は智頭急行HOT7000系。1994年の智頭急行線の開業と同時に登場したのですが、関西圏と鳥取エリアとの移動時間短縮に特化し、ディーゼルカーながら振子装置を搭載し、最高速度もなんと130km/hも出るという化け物スペックなんです。この先、姫路を超えて上郡まで東海道線山陽線を走って行くのですが、この区間は新快速電車などがバンバンかっ飛ばすようなところ。そこに混じってコレも爆走するんですから、一度体験してみたいじゃないですか。

 

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今回は自由席をチョイス。倉吉行きの下りは1号車が先頭になります。

 

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で、このHOT7000系は先頭車が非貫通タイプと貫通タイプがあり、非貫通タイプだと運転席越しの前面展望が楽しめちゃうんですよ。一応、1号車に非貫通タイプが連結されるのがデフォルトらしいのですが、必ずしも固定されているわけではなく非貫通タイプになることもあるようです。幸いなことに今日は非貫通タイプ、運良く最前列のシートを確保できました。

 

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京都を定刻に発車、電車が高速で行き交う複々線区間をかっ飛ばします。こちらは快速線、隣の各駅停車をどんどん追い抜いていくのが爽快。ホントに130km/hとか平気で出してますよ。

 

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舞子海岸のあたりで、前方に明石海峡大橋が見えてきました。このあたりは各駅停車用の複線と快速用の複線が並ぶ形、貨物列車とすれ違ったりします。

 

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さて、このへんで車内を一回りしてみましょう。窓側にはコンセントが設置されていますが、全ての車両というわけではない模様。

 

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洗面台のボウルは鳥取の因州中井窯が使われています。

 

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1号車デッキには飲料の自動販売機も設置。

 

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指定席車はシートは少しグレードが上がってる感じのものが設置されています。

 

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半室分ですがグリーン車もあります。

 

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最後尾の5号車は指定席、こちらには通常は貫通タイプの先頭車が使われているようです。

 

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貫通タイプの先頭車だと、運転席のすぐ後ろはセミコンパートメントのようなシートが設置されているため、前面展望を楽しむのはちょっと難しい感じです。

 

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京都からおよそ2時間、上郡に到着。ここから智頭急行線に入っていきます。智頭急行線はここ上郡から姫新線の作用を経由して因美線の智頭までを結ぶ第3セクター鉄道。もともとは国鉄時代に計画された山陽と山陰を結ぶ路線の一つとして建設されていましたが、国鉄再建の過程でストップ。これを鳥取県岡山県が引き取って第3セクターとして開業させました。この路線、沿線の輸送の需要は殆どなく大半が特急利用で、そのお陰で第3セクターとしては異例なほどの高収益をたたき出しているという、なかなかスゴイ鉄道だったりします。

 

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智頭急行線は建設年代が新しい分、高架とトンネルで地形を突っ切るようなルートの取り方をしています。高速での陰陽連絡を前提とした改良も行われ比較的線形もいいため、このあたりでも120km/hくらいは平気で出しながら爆走です。

 

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なんかピンクの派手な駅が見えてきましたが、これが智頭急行線の名物駅?ともいえる恋山形駅

 

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上郡から約40分、智頭に到着です。ここからはJRに戻り因美線に入ります。

 

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因美線は昔ながらの国鉄規格の路線ということもあるのか、少しペースを落として進んでいきます。郡家ではお隣に若桜鉄道のディーセルカーが停まってました。

 

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京都からおよそ3時間、鳥取駅に到着しました。考えてみたら山陽線の上郡からここまでは約1時間しかかかってません。瀬戸内海と日本海、こんなに近かったっけ?

 

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列車はこの先、山陰線を倉吉まで走るのですが、自分は鳥取で下車。列車を見送ります。

 

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ちなみに貫通タイプの先頭車は外観がこんな感じです。

 

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ここで後続の快速「とっとりライナー」米子行きに乗り換えました。

 

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使われているのはJR西日本が山陰線の高速化のため新造したキハ126系の2両編成です。

 

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車内はボックスシートが並び、居住性は悪くありません。

 

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この車内でお昼ご飯。鳥取駅で購入した駅弁、アベ鳥取堂の定番「かに寿し」です。

 

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こういう定番モノって最近あんまり買ってない気がする。長く売られてるってコトはそれだけ支持されてるわけで、これもやっぱり安定の旨さではあります。

 

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途中の由良駅が「コナン駅」になってました。なんか事件が起きそうだけどいいのか。ここは「名探偵コナン」の作者である青山剛昌の出身地で、記念館の最寄り駅でもあるから、ではあるんですがね。

 

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米子駅でちょっと改札外へ。旧駅ビルはもう随分撤去が進んでいるようです。

 

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駅のベンチは猫ブームに乗っかろうとしているのか、「よにゃーご駅」とかになってますよ。

 

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でも、そのすぐそばには「ねずみ男駅」の表記が。猫なのかネズミなのかハッキリしろ。

 

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ここからは一駅だけ特急「やくも」に乗車します。この先に進むちょうどいい時間の列車が特急しかないので仕方なく…。ただ、JR西日本のクレジットカード「J-WESTカード」での支払専用で「(おためし)トク特チケットレス」という割引特急券があり、指定席利用なのに特急料金300円で乗れてしまうんですよ。

 

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乗車時間わずか7分でお隣、安来駅に到着しました。田舎の小駅を想像してたら立派な駅舎なので吃驚。安来市の観光案内所と物産販売所を兼ねる施設になっています。また駅裏には日立金属の大きな工場もありました。結構大きな街なのね。

 

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ここは「庭園日本一」として知られる足立美術館の最寄り駅。以前は米子駅前から路線バスで行くのが一般的だったようですが、今では安来駅から美術館の運行する無料送迎バスを利用してアクセスします。確かに米子駅のバス乗り場に「足立美術館行きのバスはここから出てないよ」的な案内板が出てたりしたな…。なお、米子は鳥取県ですが安来は島根県。リアルに「.島根か鳥取か分からないけどそこら辺に行きました」状態ですね。そんなお土産もあったし。

 

omiyadata.com

 

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安来駅からバスで約20分、長閑な水田地帯のなかに突然、巨大な建物が見えてきます。これが足立美術館。主に近代日本画を中心として蒐集しており、特に横山大観のコレクションは日本トップクラスと言われています。加えてココのウリは「日本一」と言われる日本庭園でしょう。こんな片田舎(失礼だな)に年間60万人以上が訪れるというのですから、そりゃ一度確かめないとダメですよねぇ。ミシュランのグリーンガイドでも3つ星頂いたそうですし。

 

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入館料は2300円とまぁまぁ取りますが、コレクションの充実度を考えれば妥当でしょう。このクソ暑い中で庭園とかキツいかな…と思ったのですが問題なし。日本庭園って「庭園の中を歩く」よりは「庭園を眺める」ものなので、美術館からお庭を見る、って形になるわけですよ。つまり空調の効いた空間からじっくり眺められるワケです。

 

なお、絵画のコレクションは当然ですが全て撮影禁止。横山大観のコレクションは「こんなにあるのか…」という凄さでしたし、北大路魯山人のコレクションも充実しており一見の価値あり。魯山人って確か「美味しんぼ」の海原雄山のモデルとされる人くらいの認識でしたが、どうも海原雄山以上に破天荒なお方だったようです。陶芸なども大胆な感じがしたのはそのせいかも。

 

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庭園の一角に立つ銅像、これがこの足立美術館を一代で築き上げた実業家、足立全康です。コレクションの凄さが表していますが、並外れた情熱で買い集めていたんだとか。

 

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館内に入ると、大きな窓の向こうに美しい庭園が。

 

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確かにこの調和の取れた美は庭に特段の興味があるわけでもない自分でも良くわかるレベル。そりゃ60万人来るよな…。

 

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奥に進むと茶室が。

 

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玄関にソファが置かれ「左右を見てください」との案内があります。何?と思ったら…。

 

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腰掛けて右側を見ると、まるで額縁の中に描かれた絵画のように見える庭が。

 

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反対側は「生の掛け軸」、縦長の窓の向こうの景色が掛け軸のように見えます。粋ですねぇ。

 

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美術館の中を進んでいくと、様々なところに庭の鑑賞ポイントがあり飽きません。

 

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この広大な庭を維持するのも大変でしょうし、お高めの入館料も納得かも。絵画のコレクションも有名画家のものだけではなく、近年の現代日本画のコレクションも厚く、「過去のイイもの」だけでなく「これからイイものになるもの」にもちゃんと投資している様子なのに好感が持てました。