この夏に購入した「青春18きっぷ」、既に3日分を使用済みで2日分が残っています。1日分は使い道が決まっているのですが、1日分が余る計算。使用予定の1日分は8月末なので、未使用分を金券ショップに売ってもさほどいい値段では買い取ってもらえなさそうだし…。そこで、まだ行ったことのない長浜あたりを彷徨いてみることにしました。実は当初は同じ滋賀の「MIHO MUSEUM」に行こうと思っていたんですけど、暫く続いた長雨の影響で崖崩れが発生した結果、「MIHO MUSEUM」への路線バスが全て運休してしまったんですよね。
名古屋から米原まで特別快速で移動、そこから北陸線の長浜行きに乗り換えです。
まずやって来たのは駅に近い「長浜鉄道スクエア」。ここは「現存する日本最古の駅舎」とされる旧長浜駅舎を中心とした施設です。竣工したのは1882年、日本で初めて鉄道が走ったのは1872年なので、かなり初期に開業したことになります。これは東京と大阪を結ぶ主要路線について、ここ長浜から大津までは当面の間は琵琶湖経由での水上輸送にすることでコスト低減を図ろうとしたため、なんだそうです。ここ長浜駅は米原方面だけでなく日本海側の敦賀への拠点という役割も担っていました。
玄関を入るとメインホール、三等の待合室はここにあったようです。左手は上等級の待合室や事務室、駅長室などがありました。
「長浜鉄道スクエア」には旧長浜駅のほかに2つの施設があります。一つはこの「北陸線電化記念館」で、これは長浜駅の隣の田村駅から敦賀駅までが「日本で初めて交流電化を実用路線として行った区間」であることから、それに関する展示などが行われています。
館内には北陸線で活躍した蒸気機関車D51に加え、北陸線交流電化の1957年に登場した交流電気機関車ED70が展示されています。実は現在、米原から敦賀までの北陸線は直流電化区間にコンバートされてしまっているのですが…。電化方式が違う区間を直通させるには、当然ながら両方の電化方式に対応した車両を用意しなければなりません。京阪神エリアから敦賀までの直通の新快速などをもっと増発するために、車両ではなく電化方式を変えることで対応したわけです。
お隣は「長浜鉄道文化館」で、北陸線や長浜駅の歴史などを紹介する展示があります。
貴重な過去の資料からお子様向けコーナまで、なかなか幅広い展示内容です。
開業当時の長浜駅の様子を再現したジオラマがありましたが、これが解りやすいかも。この駅舎のすぐ傍まで琵琶湖岸が迫っており、汽船乗り場も近接していたんですね。
確かに、長浜鉄道スクエアのすぐ近くに「旧長浜港跡」の石碑が建っていました。
また長浜駅から鉄道に乗って琵琶湖一周とかでもよかったのですが、ここ長浜から竹生島を経由して対岸の近江今津に渡れる航路があるので、そちらに乗ってみました。長浜駅から観光船乗り場までは徒歩10分弱といったところ。
長浜港から竹生島までは約30分の航海。
竹生島は琵琶湖随一のパワースポットと言われているんだとか。
長浜港を出港、琵琶湖を横断していきます。湖なので穏やかな船旅といった感じです。
日本最大の湖だけあって、やっぱり海みたいな広さですなぁ。
そうこうしているうちに、竹生島が見えてきました。
竹生島に上陸。上陸だけならタダですが、ここにある宝厳寺や都久夫須麻神社へお参りするには入場料の支払いが必要です。
まずは宝厳寺へ。この長い石段を登っていきます。
登りきったところに本堂が。
ここからだと先ほどの船着き場も一望できます。
石段を降りたところにあるのが「唐門」、国宝に指定されています。
その先が重要文化財の「舟廊下」。
渡ったところにあるのが「都久夫須麻神社」です。
境内は島の崖の上にあり、琵琶湖も一望できます。
…が、こんな厳かな場所であるべきところで爆音が鳴り響き、大音量で音楽が流れています。何が起きたの?と思ったら、水上スキーの集団が音楽を流しながら島の周辺を走り回ってるじゃありませんか。こういうの禁止されてないのかなぁ…。そういえば島に上陸したときに「水上スキーの方の上陸禁止、トイレも使用不可」みたいな看板が出ていたのはこのせいなのか。
竹生島での滞在時間は30分。今度は今津港行きの高速船へ乗船です。
竹生島をあとに、また琵琶湖を横断です。
今津港までも約30分。穏やかな航海、といいたいところなんですが、ここでも水上スキー軍団が登場します。船が起こす波に乗るのが楽しいのか、船のすぐ近くまでやって来て波に乗ってジャンプしまくり。正直、迷惑なんだけどなぁ…。琵琶湖って特にそういうルールとか取り締まりとか、しないのかな?
最後にちょっとイヤな気分になりつつも、今津港に無事到着。
観光船乗り場から、近江今津駅へと移動します。
乗り場から近江今津駅までは歩いて5分もかからない距離で、もう駅の一部が正面に見えているほどの近さ。ただ、傍にあった観光地図を見ていたら「ヴォーリズ通り」との表記があるじゃないですか。近江を中心に活躍した建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの建築が今津にも3軒残っており、それが同じ通りに建っているみたいです。次の電車まで30分ほど時間があるので、遠回りになりますが寄っていくことに。
これが「ヴォーリズ通り」。ウィリアム・メレル・ヴォーリズは、有名なところで行くと心斎橋の大丸本店やアニメ「けいおん!」の舞台として知られる豊郷小学校を手がけた建築家ですが、宣教師として日本に来日したというユニークな経歴を持っています。1941年には「一柳米来留」の名前で日本国籍も取得しました。主に近江八幡などに作品が多数残っているので、今津にもあるというのは意外な感じ。
琵琶湖側から来ると最初に目に入るのが「今津ヴォーリズ資料館」で、もともとは百三十三銀行今津支店として1923年に完成した建物です。
内部は公開されており、ヴォーリズに関する資料や、この建物の図面や建設当時の再現模型などの展示を見ることができます。
暫く行くと、今度は「日本基督教団今津教会会堂」が見えてきます。もと宣教師ということも関係しているのか、ヴォーリズの手がけた建築には教会などの作品も多数あり、これもその一つとして1934年に竣工しています。今では幼稚園としても使われているようですが、地元の人も普通に通ってくるような感じらしく、ちょうど日曜の礼拝の帰りなのか、教会から出てきた方に「中もよかったら見学されていきますか?」的にお声がけいただいてしまいました。ちょっと時間が厳しそうなのでお断りしてしまいましたが…。
3軒目がこの「旧今津郵便局」で、1934年に建設され、1978年まで現役の郵便局として使われていました。正面玄関の丸いアーチがお洒落ですが、ヴォーリズの建築って比較的大人しい雰囲気のものでも、どこかしら「遊び」が見えるのが味があっていいんですよね。
近江今津駅に到達。高架の立派な建物でまるで新幹線の駅みたいですが、それもそのはず。湖西線の開業は1974年と比較的新しく、関西と北陸を結ぶ高速短絡線という位置づけも持って建設されているんですよね。
新快速で山科へ、そこから折り返して名古屋へ帰還しました。かなり短い距離の乗車ですが、18きっぷ分のモトは取ってる筈。