今日の宿泊先は秋田です。東京オリンピックゆかりの宿へ。
十和田湖行きバス「みずうみ号」、奥入瀬渓流の玄関口にあたる焼山で下車します。
ここに来たのは昨年7月以来、およそ1年ぶり。岡本太郎の暖炉も健在です。
ただし、今日の宿泊先はココじゃありません。「奥入瀬渓流ホテル」では宿泊者向けのアクティビティとして、奥入瀬渓流沿いをオープントップバスで走るツアーを催行しています。基本的には宿泊者専用なんですが、一部日程で宿泊者以外にも解放しており、今回はソレに乗ってみようと思ったわけです。渓流散策は去年やったし、遊歩道に沿った施設なんかも軒並み休業してますしね…。料金は宿泊者だと2200円のところ、一般開放での利用は3300円と高めの設定。ただし、温泉の入浴がついてきます。
バスは8割ほどの乗車率で「奥入瀬渓流ホテル」から十和田湖畔の子の口を目指して出発しました。予約はウェブから可能なんですが、申し込んだら受け入れ可否がメールで連絡される、という仕組み。ただ待てどもメールが来ず、電話で確認したら「予約取れてますよ」だそうで…。なんか「ちょっと足りない星野リゾート」の印象、ここでも受けちゃったかも。まぁ参加者の殆どは宿泊者だったようなので、その兼ね合いから調整してたのかもしれませんが。
この日は久々の快晴だった様子。2階建てバスの高い視点から見る渓流もいい感じです。
オープントップバスだと当然ながら上まで見渡せるのがいいところ。切り立った岩がそびえる馬門岩なんか、まさにピッタリです。
流れの対岸の滝も視線が高いと見やすかったり。
銚子大滝もバスから眺めることが出来ました。
約40分ほどで子の口に到着です。ここで10分ほどの休憩となりました。
バス車内ですが、こうしてみるとやっぱりこの開放感は凄いですな。
子の口での休憩後、バスはそのまま来た道をホテルまで戻ります。従って、バスの左右どちらに座っても、渓流の眺めを堪能できる、というわけです。
バスツアーは1時間20分ほどで終了し、「奥入瀬渓流ホテル」に帰還しました。あまり時間は無いのですが、せっかくタオル付きで含まれているので渓流露天風呂への入浴も楽しんでおきました。実はこの温泉、ここから10km以上離れた、昨晩泊まった酸ヶ湯温泉にも近い猿倉温泉から引き湯しているもの、という話を今朝参加したエコツアーのガイドさんから聞いたばかりでした。猿倉温泉は積雪の関係で冬期は休業しているそうなのですが、豊富な湯量から各地へ引き湯しているおかげで収益的には問題なし、だそうです。
温泉を頂いたあと、また焼山バス停から十和田湖行きバスに乗車。今度は八戸駅起点の「おいらせ号」です。
観光客はかなり来ている感じで、渓流沿いの国道102号を通行する車の数も昨年来たときよりも格段に多く感じます。トイレだけしか開けていない石ヶ戸休憩所も溢れんばかりのクルマが停まっていました。
何故か定刻より10分以上遅れて、終点の十和田湖駅に到着です。国鉄バスが乗り入れていた頃からの名残で「駅」の名が今でも付いています。
十和田湖駅で待っていたお宿の送迎車に乗り換えて湖畔を進むこと15分、本日の宿泊先「十和田ホテル」に到着しました。十和田ホテルの開業は1939年、翌1940年に開催されるはずだった東京オリンピックに合わせ、外国人観光客を受け入れるホテルとして秋田県が建設したホテルです。1930年代は政府のインバウンド誘致施策の一環として低利子融資により「国際観光ホテル」が全国に建てられた時代で、その数は15軒にも上ります。当時建てられたままの姿で今でも営業し「クラシックホテル」とされている「川奈ホテル」や「雲仙観光ホテル」、「蒲郡クラシックホテル」も、その15軒にカウントされています。しかしながら、その中にこの「十和田ホテル」が含まれることは殆どありません。天然秋田杉を使い東北の宮大工80人が腕を競って建てたという本館は今でも使われているので、ここも「クラシックホテル」として語られてもおかしくないはず。その謎を確かめてみたかったんですよ。
メインエントランスとフロント・ロビーは後から増築された別館のほうにあります。
このホテル、開業当初から存在する木造の本館に、増築された別館が繋がる形の構造になっています。
わざわざココに泊まるなら登録有形文化財となっている本館じゃないと意味ないでしょ。本館客室は全て和室となっています。室内の設えは部屋ごとに全部違うらしいです。
立派な床の間もあったりするあたり、しっかり作っているのが解ります。
大きな窓の広縁。
カーテンを開けると一面の十和田湖、絶景です。本館は全てお部屋は十和田湖ビューになっています。
では、館内散策へ出発。中央には1階のロビーから繋がる大階段がありますが、クラシックホテルではよく見る構造です。天然秋田杉という素材が「和」を強く感じさせますが、スタイル的には実は教科書のように「ホテル」のフォーマットに沿っているようです。
本館1階ロビー。開業時はこの階段の脇にレセプションがあったようです。
エントランスもここだけ見ると和風旅館のような趣き。
ただ、この部分は2階までの吹き抜けになっています。これも、この時代の表風ホテルではよく見る意匠かも。
2階から見下ろした眺め。
なお、本館1階ロビーの上は図書室になっています。
ここも大きな窓が設えてあり、十和田湖とそれを囲む緑が一望できます。
本館のエントランス部分。屋根のある車寄せなど、これも「クラシックホテル」のお作法、ですね。
十和田湖側から本館を眺めると、ちょっとハーフティンバー形式の「雲仙観光ホテル」を彷彿とさせる風情があります。カタチとしてはクラシックスタイルの洋風ホテル建築であることは間違いないのですが、全体に使われた秋田杉が外観で猛烈な存在感を放って「和風建築」の趣を醸し出していることに加え、客室が和室ということから「クラシックホテル」として言及されることが少ないのかもしれません。また、「国際観光ホテル」15軒にカウントされないのは、このホテルが秋田県の「県営ホテル」として、秋田県の負担で建設されたものであるための様子。
このホテルには、十和田湖を見渡せる絶景を楽しめる露天風呂を備えた大浴場がありますが、残念ながら温泉ではありませんでした。でも、あの露天風呂からの眺めが最高なので全然オッケー。
夕食はレストランでの提供です。
夕食は秋田の地のモノを使った、ちょっといいコースを選んでおきました。
まずは前菜から。加えてアミューズが出たのですが写真撮り忘れた…。
お供は地酒3種の飲み比べセットで。横手市の「まんさくの花」、大仙市の「秀よし」、鹿角市の「鏡田」の3種でした。
お造り。
十和田ヒメマスの塩焼きも登場です。
小鍋は「だまっこ鍋」。要は秋田名物の「きりたんぽ」を団子のようなカタチにして入れた、みたいなやつです。
こちらは鯛のかぶら蒸し。
肉料理は秋田錦牛のステーキでした。柔らかくて美味。
食事ものは茸ごはんと味噌汁。
デザートが充実しているのが面白いところ。秋らしい栗のババロアなどに加え、これまた秋田の味覚であるバター餅もあったりして。
夕食のあとはまた風呂に入ってたりとのんびり過ごし、早めに就寝。
翌朝、十和田湖の向こうから昇る朝日で起床。
朝食もレストランで頂きます。
洋食と和食が選べるのですが、今回は和食にしてみました。このほか、コーヒーやソフトドリンクが自由に頂けるようになっています。
朝ご飯を済ませ、もう一度ホテルを外から眺めてみます。山岳リゾートホテル風の美しい建物ですね、やっぱり。
エントランスの吹き抜けの細工の見事さには圧倒されます。和洋折衷と言うよりは「和洋が混じってる」という感じなのかも。秋田や岩手、青森から約80名の宮大工を集め、その腕を競わせる形で建設したそうなのですが、おそらく「洋風のホテル」を見たことがないような職人さんもいたんじゃないでしょうか。そのお陰で、「設計は様式なのに設えが猛烈に和風」という、この独特の雰囲気が作られたのかも。
チェックアウトまではお部屋で。最後にもう少し、ここからの十和田湖の眺めを楽しみます。