へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

北東北温泉巡り、その5:100年前の未来都市で「あけぼの」に再会する。

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今日は秋田から名古屋まで帰ります。

 

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ホテルの送迎車で、十和田湖駅まで送ってもらいました。現在、十和田湖まで来るバスは青森か八戸からのJRバス東北の路線のみ。その昔は花輪線十和田南駅も十和田湖への玄関口となっており、ここからのバスもあったのですが…。普通だったら、こここから昨日通ってきた道を戻るバスに乗るしかないわけです。

 

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とりあえず、湖畔を散策。

 

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休屋の遊覧船乗り場の湖畔からは、対岸に先ほどまで滞在していた「十和田ホテル」が見えます。

 

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十和田湖って実は青森県秋田県の県境に位置していて、湖面の県境が確定したのは2008年とかなり最近の話です。先ほどの十和田駅のあたりは青森県十和田市ですが、この神田川を渡ると秋田県小坂町。「十和田ホテル」も秋田県小坂町にあるんですよね。

 

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休屋地区でも秋田県サイドにある「十和田湖レークビューホテル」までやってきました。

 

www.town.kosaka.akita.jp

 

実はここから、小坂町の中心街とを結ぶ予約制の乗り合いタクシーが運行されています。運賃は片道2000円、所要時間は50分ほど。青森から十和田湖までのバス運賃も3000円程度するので、それほど高額という感じでもありません。10:20発の便を予約しましたが、定刻少し前に1台のタクシーが到着、結局乗客は自分1名での出発でした。運行しているのは小坂町の「豊口タクシー」、恐らく小坂町内であれば営業範囲とかの問題もないので、同じ町内となるこのホテル発着にしているのでは。

 

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タクシーは九十九折りの急な山道となっている国道103号を登っていきます。登りきったところが発荷峠展望台。「もしよかったら観光していかれませんか?」とここで停車してくれたので、お言葉に甘えておきましょう。

 

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階段を上った屋上が展望フロアになっています。

 

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ここが十和田湖を見下ろす、なかなかの風景が楽しめる場所です。実は青森側から来ると、十和田湖をこのアングルで眺められる場所は通過しないのよね…。

 

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発荷峠を出ると国道と分かれ、秋田県道2号、通称「樹海ライン」を通って山道を下っていきます。途中、もう一箇所「道の駅こさか七滝」にも寄ってくれました。

 

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ここは「日本の滝百選」にも選ばれた「七滝」のあるところ。

 

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しばし滝を眺めながら一休みです。

 

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ほぼ定刻で終点、小坂町の康楽館前に到着しました。お値段ちょっとお高めではあるのですが、発荷峠や七滝などの現状では公共交通では行けないところに立ち寄って観光できるのは大きなメリット、という気がします。

 

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加えて「とくとく十和田号」のメリットは「小坂町の観光ができる」ことじゃないでしょうか。ここは小坂鉱山の企業城下町として明治時代には大いに栄えたところで、当時の様子を偲ばせる遺構が数多く残されています。こちらは現存する最古の芝居小屋とされる康楽館。小坂町観光のハイライトの一つです。

 

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康楽館は今でも現役の芝居小屋として定期公演が行われています。この日も「神崎順と10carats」によるボーイズレビューショーの公演中でしたが、館内見学は可能とのことなのでツアーに参加してみました。

 

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ツアーのハイライトは回り舞台の地下構造見学かも。人力で回すんだそうです…。公演がなければ楽屋も見学できるようですが本日はNG。東京から大物歌舞伎俳優がやってくる公演もあったりして、楽屋には訪れた役者さんのサインが壁一面にあるそうなんですが、今ではサインは禁止されています。それというのも、この康楽館が2002年に国の重要文化財に指定されてしまったため。いくら有名人のサインとはいえ「文化財への落書き」になっちゃいますからね。そのため、壁にパネルを貼ってそこにサインして貰っているそうです。なお、楽屋見学がないかわりに、公演を少し鑑賞させてもらうことはできました。劇場内の意匠も素晴らしかったのですが、公演中だったので撮影できなかったのが残念。

 

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お次にやってきたのは「小坂鉱山事務所」。1905年に建設され、1997年まで現役の事務所として使われていた建物です。ただし、元からこの場所にあったわけではなく、2001年にこの場所に移築されたものです。こちらも国の重要文化財です。

 

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エントランスを入ったところにある、優雅な螺旋階段が印象的。明治時代の衣装レンタルもあり、撮影を楽しんだりもできます。

 

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エントランス上のバルコニーも素敵。

 

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こちらは当時の所長室。インテリアなども当時を再現しているようです。

 

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ちょうどお昼時なので、こちらのレストラン「あかしあ亭」でランチにしました。「藤田倶楽部」の文字が…って、小坂鉱山は藤田財閥の経営だったからね。今では鉱山関連の経営は改名した「DOWAホールティングス」が担っています。そういえば、昨晩泊まった「十和田ホテル」も所有は秋田県のようですが、運営は藤田観光でした。

 

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選んだのは「鉱山煮込みハンバーグ」。どのへんが「鉱山」かは不明ですが、まぁまぁ旨かったのは確か。

 

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これは街中に120箇所もあったという共用栓。1905年にこの上水道が整備されたのですが、なんと県都である秋田県よりこちらのほうが先だったというから吃驚。電気が通ったのも秋田県で一番早い1897年で、1903年にはイルミネーションが目玉の「電気まつり」の開催まで始まりました。「鉱山」という強力なアセットを背景に、山奥の町がまるで未来都市のような様相だったわけです。

 

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そして小坂町といえば、鉄分高めな人には外せないスポット「小坂鉄道レールパーク」があります。

 

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小坂鉄道は主に鉱山の産出物を輸送することを目的として1909年に開業しました。1994年には旅客輸送を廃止し貨物輸送のみとなりましたが、その貨物輸送もなくなり2009年に廃線に。

 

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ここは終点だった小阪駅を保存し、当時使われていた車両などを保存しているほか、レールバイクなども楽しめる施設になっています。

 

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そしてココの目玉となっているのが、この車庫の中に。

 

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かって使われていたディーゼル機関車の隣に並ぶのは、ブルートレイン「あけぼの」で使われていた寝台車、24系客車です。

 

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ここに保存されているのは4両。電源車に個室A寝台車、個室B寝台車に開放型B寝台車です。この車両がやってきたのは2015年で、「ブルートレインあけぼの」として宿泊できる施設として運営されてきました。しかしながら、新型コロナの影響で昨年からホテルとしての営業は休止中になってしまいました。実は2016年に泊まりに来たことがあるのですが、今やここにしか残っていない一人用A個室寝台の夜を楽しむことができました。加えて、朝になると宿泊施設として設置されている箇所から昼間の車内見学用に置かれる場所までの移動の際にも車内にいられるので「動いてるブルトレ」も体験できるという素晴らしい施設だったんですが…。

 

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きちんと車庫に置かれているせいもあるのか、全般的に非常に綺麗に保たれている印象です。小坂鉄道レールパークは冬期休業。今年のホテル営業は実施しないことが決まっていますが、来年は是非再開できる状況だといいなぁ。

 

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小坂からは秋北バスで大館まで向かいます。小坂から大館までは小坂鉄道が結んでいた経路。線路はまだかなり残っており、バスの車窓から見える場所もありました。

 

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およそ1時間弱で大館駅前に到着しました。

 

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ここでもう一箇所、寄り道していきます。

 

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それが大館駅前にある「秋田犬の里」。2019年にオープンしたばかりの新しい施設です。

 

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館内に入ると、手前に秋田犬グッズや地元のお土産物を豊富に揃えるショップや観光案内所が。

 

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で、その奥に秋田犬コーナーがあります。

 

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こんな秋田犬萌えなディスプレイも。

 

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もちろん、ホンモノの秋田犬も見れますよ。ここでトレーニングする様子を見学できるようになっています。

 

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ちょうどトレーニング中でした。

 

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次にやって来た秋田犬はぬいぐるみを咥えてブンブン振り回すなど、ちょっと怖い感じ。

 

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でもこの仔、大館駅の観光駅長さんでした。

 

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外には先ほどまでトレーニングしていた白い秋田犬が飼い主さんと一緒にいたので、ちょっと写真撮らせてもらいました。近くで見るとかなりの大きさで結構ビビりますが、人なつこくてカワイイですねぇ。

 

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この「秋田犬の里」にはちょっと変わったものが。それがこの電車です。「青ガエル」の愛称で親しまれた東急5000系電車、暫く前までは東京の渋谷駅前にあったやつです。何故か突然、渋谷からここ大館に移設されてしまったんですよ。一応「ハチ公」繋がりらしいのですが…。

 

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車内の様子も渋谷時代とそれほど変わっていないみたいです。

 

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大館から秋田まで各駅停車で移動。またオールロングシート701系ですね…。ここから約2時間かかりますが、青森と秋田を結ぶ特急「つがる」は1日3往復しかないんです。

 

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秋田駅に到着後はそのまま秋田空港行きのリムジンバスに乗車。

 

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空港までは30分ちょっと。

 

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名古屋までの戻りはここからANA便で飛びます。

 

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機材はセントレアではよく見かけるDHC-8-Q400。連休最終日のせいか、7割程度のまずまずな搭乗率でした。