へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

帰省ついでに鉄道宿へ、その3:現状では日本でここだけ?寝台車に泊まれる「ブルートレインたらぎ」。

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いまのところ「ブルートレイン」で一晩過ごせるのは日本でここだけ、じゃないかしら。

 

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中津からは国道212号線を日田方面へ。天領でもあった日田へは「日田往還」と呼ばれる街道が九州各地から延びており、これもその一つ。耶馬溪の「青の洞門」にも寄り道してみました。

 

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この断崖絶壁を安全に通れるようにと1750年に造られた道で、日本最古の有料道路とも言われてるんだとか。古くから景勝地とも知られていたようですが、だからこそ鉄道が通ったりしたんだろうね。

 

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JRの日田駅に到着。

 

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待合室にはこんなパネルが。そうそう、ここ日田は「進撃の巨人」の作者である諫山創先生の出身地。それで、「進撃の巨人」とコラボした企画をかなり積極的にやってるんです。

 

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駅前には2021年3月にリヴァイ兵長銅像が設置されました。これ目当てらしきお客さんも結構見かけます。

 

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スマホにアプリをインストールすると、こんなARも楽しめたりして。

 

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続いて日田の郊外にある大山ダムへ。

 

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ここは2020年の11月に「エレン・ミカサ・アルミンの少年期の銅像」が設置されたところ。なんだか上を見上げて呆然としてる不思議な像ですが…。

 

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こんな感じで、ダムの上を見上げているんですよね。

 

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で、ARで見るとこう。つまり、巨大な壁の向こうから巨人が出てくる、物語冒頭のシーンを再現しているワケです。ここは日田駅前にも増して多くの観光客がいましたが、こんなとこに来るのはダムマニアか「進撃の巨人」ファンくらいの筈。ここまでの交通の便も決していいわけでもないのに、かなりの集客力ですな。

 

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そろそろお昼時、ご当地グルメ日田焼きそば」の有名店「想夫恋」の大山店に入ります。

 

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日田焼きそばの特徴は麺を鉄板の上でカリカリになるまで焼くことだそうで、カリカリの部分とそうでない部分の麺が混じる食感が面白い一皿でした。

 

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この「想夫恋」日田だけでなく福岡や熊本などの九州各地に加え本州(名古屋にも天白に支店があったじゃん…)にも出店しているのですが、ここ大山店は諫山先生がバイトしていたことがあり、色紙も飾られていたりします。

 

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「想夫恋」のすぐ隣には「道の駅 水辺の郷おおやま」があります。

 

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2021年3月、ここに「進撃の巨人 in HITA ミュージアム」がオープンしました。諫山先生の出身地は日田市といっても旧大山町、まさにこの道の駅のあるあたりなんですよね。自分の故郷にミュージアムができるなんて、まさに「故郷に錦を飾る」みたいなもんだろうなぁ。

 

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実際に使われていたデスク。

 

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様々な原画だけでなく、子供の頃に描いた絵までと展示はかなり充実。そのうえ、ご本人の丁寧なコメントまで添えられています。生まれ育った日田への恩返しのため、だそうですが、それにしてもサービス精神旺盛じゃん!という印象。周囲を山に囲まれた日田という土地が「進撃の巨人」という物語の発想のルーツになったとも言われているので、ご本人の思い入れも強いのかも知れません。いずれにせよ「進撃の巨人」ファンなら必見ですよコレ。「とりあえず全巻読んだ」程度の自分でも楽しめたので。

 

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ここも結構評判のいい「奥日田温泉うめひびき」で日帰り入浴もしてきました。露天風呂がちょっとインフィニティプールっぽいんですよね。

 

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日田からはまた国道212号を南下して阿蘇まで降りてきました。

 

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これも2021年3月に開通した新阿蘇大橋の近くを通過。

 

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阿蘇大橋は2016年の熊本地震で崩落した阿蘇大橋の代替として建設されたもの。阿蘇大橋の残骸の一部は震災遺稿として保存されています。

 

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益城熊本空港ICから九州自動車道に入って人吉ICで流出し多良木町へ。本日の宿泊地「ブルートレインたらぎ」に到着しました。おそらく現在、通年で営業している「ブルートレインに泊まれる宿」としては日本唯一の存在です。

 

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ブルートレインたらぎ」はJR九州から譲り受けた寝台車3両を活用し、2010年7月に開業しました。九州にはほぼ同時期、肥薩おれんじ鉄道阿久根駅前に「あくねツーリングSTAYsion」が寝台車2両で開業していますが、こちらは数年で閉鎖。その車両は今は四国に渡り、新たな宿泊施設として開業準備が進められています。また2014年には岩泉に「ブルートレイン日本海」がありますが、こちらは基本的には夏期のみの営業です。秋田の小坂レールパークでは2015年から「ブルートレインあけぼの」の営業が始まりましたが、こちらも夏期のみの営業な上、2020年と2021年は新型コロナのため休業となってしまっています。つまり、現状で通年で「ブルートレイン」に泊まれる宿は基本的にここだけ、ということになります。

ロケーションはくま川鉄道多良木駅前と大変に便利…と言いたいところなんですが、2020年7月の豪雨で甚大な被害を受けた結果、くま川鉄道は長期運休を余儀なくされることに。この冬にやっと一部区間での運行が再開されましたが、まだ便数も限られています。それ以前に、くま川鉄道の起点となる人吉までの肥薩線も被災して長期運休中です。幸いなことに人吉ICを経由する高速バス路線は多く、それを乗り継げばここまで来ることはできるのですが、以前に比べればアクセスはイマイチになってしまっています。そこでコチラもマイカーで来れるときに来てしまおう、と思ったわけです。まぁその前に何回か来てるんで初訪問じゃないんですけどね。

 

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チェックインは2号車で行います。この車両は寝台区画を撤去してテーブルなどを並べ、フリースペースとして使われているところ。寝台では飲食NGなので、食事などはここで取ることになります。もう営業開始から10年以上経っていますが、非常に綺麗に保たれています。ちょうど今年に改修工事を行ったせいもあるんでしょうね。

 

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今夜泊まるのは3号車のB寝台個室「ソロ」のお部屋です。

 

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室内はほぼ現役時代を留めています。このシートの柄もJR九州所属車のもの。

 

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これは座席?の状態。上の出っ張りは上段の個室の床部分になります。このB寝台個室、現役時代は開放式B寝台と寝台料金が同じ設定でした。少しでも部屋数を稼ぐため、上下互い違いで設置されていたんです。

 

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ベッドメイクは自分でやります(現役時代でもそうだったんだけどね)が、完成した状態がコレ。

 

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枕元には読書灯や部屋のコントロールパネルがありますが、現在こちらは利用できない状態。部屋の照明のスイッチは別に用意されていました。

 

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壁面には折りたたみ式の大きめのテーブル。寝台を座席として腰掛けるとちょうどいい位置になっています。その奥の窓側にはベッドサイドテーブルとして使える台と、その下にゴミ箱がありました。ただし、このゴミ箱は現在は使用不可になっていますが。なお、この壁面にコンセントが増設されています。現役時代は室内にコンセントとかありませんでしたからね。

 

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多良木駅周辺はちょっとした繁華街で飲み屋なども点在しています。「ブルートレインたらぎ」には飲んだ人が運転代行を頼まずにココで一晩泊まってから帰る、という需要も意外とあるそうで、だから営業が続いているという面もあるのかも。そういうところで夕食を済ませても良かったんですが、周辺のスーパーに行ったら馬刺しが安かったので買い出し品を宿で食べることに。

 

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2号車のフリースペースにはテレビも設置されていたり。一応これでも「列車の中でご飯」気分は充分楽しめます。

 

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晩ご飯のあとはお風呂へ。

 

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ブルートレインたらぎ」に宿泊すると、すぐ目の前にある「多良木町ふれあい交流センター えびすの湯」の入浴券が1枚つきます。広い浴槽に露天風呂となかなか立派な施設で、のんびり入浴できるところ。

 

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翌朝目を覚ますと、ちょうどくま川鉄道の列車が多良木駅を出発したところでした。本来はもっと運行本数も多く、時折聞こえてくる列車の通過音が雰囲気を盛り上げてくれるんですが…。

 

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明るくなってきたので、いろいろ見て廻ることに。こちらは「ソロ」の上段個室。屋根のカーブに沿って円を描く窓が独特です。乗車するときにはなんとなく下段より上段の方がトクしたような気がしてたなぁ。

 

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洗面所やトイレはそのまま残されていますが、実際の使用はできない状態。

 

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そのかわり車両に隣接して洗面所とお手洗いのある建物が設置され、こちらが使えます。トイレもウォシュレット付きです。

 

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デッキの給水器。昔の優等列車には必ず付いていた設備です。

 

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1号車は開放式のB寝台、もちろんこちらも宿泊可能です。複数での旅行ならこっちのほうが楽しいかもしれません。

 

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外観も非常に綺麗に保たれています。何と言っても車両に立派な屋根がかけられているあたり、ちゃんと保存する気合いを感じます。野ざらしだと、どうしても劣化が早くなってしまいますからね。

 

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1号車の開放式B寝台、スハネフ14型の外観。

 

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2号車のオハネ15。

 

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3号車もオハネ15ですが、こちらは個室が並ぶ車両です。

 

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個室が上下に互い違いに並ぶので、小さな窓が交互に2段に並ぶ独特の外観です。それにしても、現役時代よりも綺麗なくらいじゃないですかコレ。末期には運行中の車両ですら塗装が剥げてたりしたもんな…。

 

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名残惜しいですが朝9時過ぎに出発。実家へと向かうのでした…。