バブルの残り香、って感じ。
ホテルを出て中禅寺温泉バスターミナルへ。「ザ・リッツ・カールトン日光」にはホテルの目の前にバス停があるのですが、そこに停まるのは中禅寺温泉方面だけ。いろは坂が一方通行なため、日光方面へのバスに乗るにはココまで来る必要があります。
JR/東武日光駅方面のバスで第2いろは坂を下って馬返のバス停で下車。なんでこんなところで?って感じでしょ。ここからまた折り返して中禅寺湖方面へ行くためです。
昨日登ったいろは坂をまた登って明智平のバス停で下車しました。昨日は強風のため運休だった明智平ロープウェイに乗りたかったのですが、いろは坂は現在一方通行となっているため、明智平は中禅寺湖方面にしか行けないルート上に位置することになってしまいました。そのため、中禅寺湖から明智平に行こうと思うと、いったん馬返まで降りて再度上り方面へ向かうという大回りをする必要があるんです。
普段であればそんな無駄なコトをするなんて躊躇しますが、今日はタダですからね。今年2022年の2月、「日光・鬼怒川エリア週末フリーデー」として土日祝日の計10日間、このエリアのバスや鉄道が無料になるパスを無料で配布するという神イベントを開催中だったのです。この土日の2日間で申し込んでいましたが、昨日の東武日光駅の観光案内所で相談したら2日分のパスを先に戴くことが出来ました。おかげで、今日のバス代はタダ、となったわけです。
明智平ロープウェイは長さ約300m、高低差も86mという小規模なもの。所要時間も3分ほどで展望台まで着いてしまいます。昔はここまでケーブルカーが走っていたんだそうで。ちなみに「フリーデー」で貰ったフリーパスはこのロープウェイも有効で、通常は往復1000円のところ無料で乗れてしまいました。
展望台からは男体山から中禅寺湖、その手前には華厳の滝というパノラマが広がります。ロープウェイだけ残ったのも納得の眺めです。
反対側からは関東平野方面が。こちらの眺めもなかなかですよ。
また上り方面のバスで中禅寺温泉まで戻ってきましたが、まだちょっと時間があります。湯本温泉方面のバスで少し先まで行ってみましょう。
湖沿いにしばらく走って…。
竜頭ノ滝まで来てみました。
冬なので凍った滝。これはこれで綺麗ですが、それほど規模が大きくはないので、華厳の滝ほど「冬は冬の味わい」ってほどでもないかなぁ、という印象。一昨年の紅葉の時期に来ちゃってるんで、それに比べると…という気はしなくもないです。
中禅寺温泉へ戻る途中、バスを降りて日光二荒山神社中宮祠へ立ち寄り。
ご神体のある男体山への登山口は夏の間だけしか開かず、今は閉まっています。
中宮祠からは歩いてバスターミナルへ戻ります。昨日停まったリッツが見えてます。
バスで東武日光駅まで降りてきました。
駅前にはここから馬返までを1968年まで結んでいた日光軌道線の電車が保存されています。日光電車廃止後は岡山で活躍していたそうですが、それが里帰りしてきた形です。いわゆる「路面電車」だったわけで、モータリゼーションが進みつつあった当時としては「邪魔者」だったんでしょうが…。
では、本日のお宿「大江戸温泉物語 日光霧降」へ向かいましょうか。公共交通は夏期しか無い場所にあるのですが、駅から無料のシャトルバスが運行されています。
およそ15分、周りに何もないところに忽然と姿を現す珍妙な建物が本日の宿泊先です。
なんか「日光」という場から踏み外したような近代的な佇まいのエントランス。
フロントでチェックインを済ませて客室へ。
このホテル、なかなか複雑な構造をしています。フロントがあるのは3階。ダンスホールとかあるの?
吹き抜けになっているホールを渡る通路を通って宿泊棟へ。
通路から見下ろすとなんかごてごてした装飾が目立ちます。
客室はこんな感じ。「大江戸温泉物語」にはちょっと珍しい洋室です。実はこのホテル、もとは「メルモンテ日光霧降」として郵政省が「郵便貯金の普及」を目的として建てたリゾートホテル。しかもポストモダンを提唱したアメリカの有名建築家ロバート・ヴェンチューリが設計を手がけるというゴージャスなものだったりします。竣工こそ1996年ですが、まだバブル経済の残り香かくすぶっていた時代。あの「勢い」を止められず出来てしまったんでしょうね…。ヴェンチューリは後のインタビューでこの建築を「自分のやりたいことが出来た」とか語ったそうな。その後の郵政民営化なども経て「メルモンテ」としての運営は10年ほどで終了し、今では「大江戸温泉物語」の施設として運営されています。なお、210億円の建設費がかかったこのホテル、大江戸温泉物語へは6億3千万円で売却されたそうです。そんな二束三文で…。
客室にはベランダがありますが、「冬期は出ないでください」との張り紙が。窓からは同時に建てられたプール棟も見えます。こちらは今では「ビバハワイアン」という名称で夏期のみ営業しているそう。
既に竣工から20年以上経過していますが、大規模な修繕等までは行われていない様子で少し古さは感じさせます。それをカバーするためか、ベッドサイドには後付けでUSB電源コンセントがつけられていました。ちなみにWIFIは客室内では利用不可。ロビーエリアなど限られたところのみで使えます。
大浴場は最上階の6階に。温泉なのは露天風呂のみで、内湯は井戸水です。
6階には湯上がりラウンジもあり、ビールなどアルコール類も含めて無料で提供されていました。最近の大江戸温泉物語で始まったサービスみたいですね。ドリンク類は部屋に持ち帰ってもOKですがレストランへの持ち込みはダメとのこと。まぁそりゃそうだよね。
夜になると日光市街地方面の夜景が。
レストランは1階。夕食・朝食ともここでバイキング方式で提供されます。
種類はそこそこ豊富です。まずはお造りや天ぷらなど戴いてみました。日光らしく湯葉もあったりして。
ステーキなど肉料理など。
宇都宮餃子もありました。割と旨かったです。
カレーで〆。
デザートはタイムサービスとしてマリトッツォとかも出てきました。
レストランのある1階は「ビレッジストリート」と名付けられ、売店やラウンジなどもあります。
ここにも無料ドリンクコーナーがありました。
翌朝。今日も天候には恵まれたようです。
朝食もまぁまぁ。「勝手海鮮丼」みたいなコーナーもありましたが、ネタのラインナップはビミョー、普通の朝食メニューで攻めた方が満足度は高いかも。実演で出してたクロックムッシュが意外な旨さでした。
朝食後、建築をじっくり眺めてみました。ヴェンチューリは巨匠ミース・ファン・デル・ローエの"Less is more"=少ないほど豊かである、を"Less is bore"=少ないのは退屈、と揶揄したようなお方でして、確かに一見シンプルなシルエットに見えるのにいろいろゴテゴテと装飾がくっついてる、といった謎の印象を残すものになっています。日本的なモチーフを多数取り入れた「つもり」らしいのですが、確かに屋根の寺院的な大きな張り出しなどは「それ」なのかも。
並んだ柱と謎の装飾は竣工当時からあったオリジナルのもののようです。
側面もいろいろと主張が激しい感じはしますねぇ。
吹き抜け部分の柱の装飾は電柱っぽいのと花束っぽいのが並びます。これも「日本的」らしいです。瓦屋根っぽい装飾もあり、これもほぼ竣工当時のものの様子。所々顔を出す日本っぽいモチーフは「大江戸温泉物語」との相性も悪くないのかも知れません。
確かにちょっと華やかな雰囲気にはなっています。なんだか、どう評価していいものか…という感じですねココ。個人的にカオスな印象は嫌いじゃありませんが。
ホテル9時発のシャトルバスで出発です。