へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

「しばうら鉄道工学ギャラリー」は凄いぞ。

東京は豊洲、「しばうら鉄道工学ギャラリー」に行ってきました。

 

芝浦工業大学付属中学高等学校が豊洲に移転した2017年、このギャラリーもオープンしました。もともと学生向けに機械模型などを展示するスペースの設置が検討されていたことに加え、地元から「街の賑わい」に寄与する機能への要望もあったことから、一般公開する何らかの施設をオープンさせることに。それが様々な要因が重なり「鉄道に関する展示コーナー」となって実現した、というような経緯だそうです。

 

現在は新型コロナ対策として入館は予約制になっています。予約はサイトからフォームに記入して行えます。

 

shibaura-rtg.com

 

入館してすぐ右手にギャラリーが。入口に改札があったりして雰囲気出してますね。なお、ここは現役の中学・高校の校舎でもあります。ちょうどこの日は体育祭が行われており、ギャラリーの前を高校生らしき皆さんが賑やかに行き交っておりました。むっちゃ陽キャっぽいコが「あ、これオレの友達が作ったんだよね」とか鉄道模型をじっくり見てたりするあたり、さすが芝浦工大の付属校だわ、と関心。

 

それほど広いスペースではありませんが、ショーケースには数々の貴重な品々、中央には鉄道模型のレイアウトなどがところ狭しと並んでいます。

 

このギャラリーに来た最大の目的はこれです。

 

2020年の1月から、新しく「種村直樹コレクション」の展示が開始されました。毎日新聞の記者からフリーの鉄道ライターとなり、「レイルウェイ・ライター」を名乗って1970年代から2000年代初頭まで活躍された方です。新聞記者時代の経験を生かし主に「鉄道ジャーナル」などでの執筆が多かったのですが、個人的にはこの方の最大の功績のひとつは書籍「鉄道旅行術」だと思います。鉄道趣味が今ほど「普通」ではなく、ネットなども無かった時代において、複雑怪奇な旧国鉄の「きっぷ」のルールやお得な利用法などを解りやすく解説した同書はある意味、乗り鉄(当時はそんなコトバ無かったですが)のバイブル、といっても過言ではない存在でした。季刊だった「旅と鉄道」に「汽車旅相談室」という連載があり、読者からの質問に回答していただけでなく、個別の質問の手紙(郵便で送るわけですよコレが)にも対応。そんな熱心な読者の会員組織「種村直樹レイルウェイ・ライター友の会」なんてファンクラブ的なものもあったほどです。リアルで会えるイベントなどのファンサも行われていましたし…。かくいう自分も何回か参加したことあったりしましたけどね。

そんな種村氏が亡くなったのは2014年。遺品として膨大な資料が遺されたのですが、その寄贈先の一つがここ「しばうら鉄道工学ギャラリー」だったのです。ただ、展示が始まってからすぐに新型コロナの流行が始まりギャラリーは臨時閉館に…。その後も感染状況によって再開したりまた閉館したりが繰り返され、やっと今回タイミングが合って訪問できたわけです。

 

壁面には1979年の「国鉄全線完乗」の際の横断幕が飾られていましたが、こちらには1983年の「日本の鉄道全線完乗」の際のものが。奥の「TTTT」と書かれた旗は、「友の会」のイベントの待ち合わせの目印などでよく出てきてたなぁ。

 

「友の会」の機関誌に、特徴的だった新幹線型の種村氏の名刺が。右手のものは「読者カード」。ハガキや手紙を送ってきた読者は全て一人1枚、このカードに記録していたそうです。

 

著書なども所蔵されています。

 

当初は「種村コレクション」が目当てだったんですが、このギャラリー、そのほかにもヤバいモノが山ほどあったんですよ。こちらは「岸由一郎コレクション」。鉄道博物館学芸員として活躍された方でしたが、2008年の岩手宮城内陸地震で遭難、35才という若さで亡くなってしまいます。その遺品が寄贈され、その一部が展示されています。

 

こちらは「星晃コレクション」、戦後の国鉄で数々の近代車両の設計に携わった凄い方です。その遺品もあるの?

 

国鉄時代に列車内で配られていたマッチ。列車の中でタバコを吸うのが当たり前だった時代(国鉄の長距離列車で「禁煙車」が導入されたのは1976年、しかも新幹線「こだま」の16両のうち1両だけ、といった状況でした)、列車ごとに趣向を凝らしたものが配られていたんですね。

 

1958年に運転開始し、東京~大阪間を6時間半で結び「日帰りできる」と「ビジネス特急」と呼ばれた特急「こだま」の食堂車メニューもありました。帝国ホテル列車食堂の担当だったようですが、メニューの表紙にはフランク・ロイド・ライトが手がけた旧館が描かれています。

 

この芝浦工業大学付属中学高等学校の鉄道研究部は鉄道模型のコンテストで上位に入選したり、各種のイベントに出展したりと活動は盛んです。展示されている模型の多くは部員の皆さんが造ったもの。

 

中央の大きなレイアウトは実物の運転台を改造したコントローラーで実際に模型の運転もさせてもらえます。

 

入口脇に飾られたこの80系電車のHO模型は、今年の「全国高等学校鉄道模型コンテスト」のHO部門で最優秀賞を受賞したものだそうです。10両編成を制作していますが、車内の椅子をイチイチ作って並べるのが大変だった…と部員さんは言ってたとか。

 

壁面のパネルは、開校100周年事業として復元作業中の蒸気機関車に関するものでした。西武鉄道保有していた403号機関車を譲り受け絶賛リストア中で、まもなく学校敷地内で公開が始まるそうです。工科大付属の中学・高校とはいえ何で機関車?と言う気がしますが、この学校のルーツは1922年に開校した「東京鉄道中学」。戦後、芝浦学園と合併して今に至りますが、「そもそもの成り立ち」として鉄ネタ持ってくるのはおかしくないわけですな。

 

帰り際、確かに学校の敷地の一部に幕で囲まれた一角がありました。機関車ココなのね…。

この施設、他にも鉄道趣味界の重鎮みたいな方のコレクションが多数見られますし、鉄道好きなら是非一度は行くべき、かもしれません。ギャラリーにいた「係の方」は恐らく鉄道研究部の顧問の先生ではないかと思われますが、いろいろとお話しさせて頂いたのも結構楽しかったです。