へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

なくなる(かもしれないもの)拾い、in横浜。

3月下旬、横浜中華街での宴会へのお誘いを受けました。ちょうどこの時期、横浜では「なくなる」ものがいくつかあったので、立ち寄ってみた次第。

 

名古屋からはJALの羽田便を利用しました。今日は2022年冬ダイヤ最終日でB737-800ですが、明日から始まる夏ダイヤではB777-300ERの投入が予定されている便です。

 

羽田空港からはリムジンバスで横浜まで移動です。YCATへ行く便のほかに、山下公園やみなとみらい地区へ向かう路線もあり、それに運良く間に合ってロイヤルパークホテルで下車。横浜ランドマークタワー隣にある「三菱みなとみらい技術館」が今日の最初の訪問地でした。

 

10時の開館と同時に突入。

 

こちら、基本的には三菱重工の歴史や製品、技術などを紹介する施設なんですが…。

 

本日のお目当てはこちら。

 

三菱MRJに関する展示コーナーがあるんですよ。三菱MRJ三菱重工が開発「していた」小型旅客機。2008年に正式にローンチし2013年には初号機納入だったはずがスケジュールは遅れに遅れ、試作機が初飛行したのは2015年のことでした。その後も納入予定は遅れ続け、2019年には何故か突然「三菱スペースジェット」に名称変更されます。で、納入時期の目処が立たないままコロナ禍に突入し「一旦立ち止まる」と事業は凍結、ついに2023年2月に「開発中止」が発表されてしまいました。当初は「日本のスゴイ技術をもってすればこの程度の飛行機なんて楽勝」ムードだったけど、途中あたりから何となくグダグダでダメムード漂ってたしな…。

 

2017年にMRJの製造拠点となるはずだった県営名古屋空港の隣接地に「MRJミュージアム」がオープンし、そちらにも行ったことがあります。MRJミュージアムにもこんな実物大の客室モックアップもありましたが、展示物の撮影はNGだったのよね。

 

操縦席はシミュレーターとして使われていたようですが、コロナ対策で休止中でした。

 

MRJのライバルと目されていたのはブラジルの航空機メーカー、エンブラエルのE-JETシリーズでした。

 

薄型のシートや大型のオーバーヘッドビンなどを採用してE-JETよりも余裕のあるキャビンがウリだったんですけどね。

 

さまざまなセールスポイントのアピールも、事業中止が決まった今となってはもの悲しさを感じさせます。

 

最新の技術を採用したエンジンをいち早く採用してE-JETを引き離す算段だったのに、E-JETも同じエンジンを採用した新型の開発をほぼ終えていたので、その辺のアドバンテージも実は失われていました。そういう意味では事業中止は賢明な判断、かも。この展示も「一兆円近い多額の資金を投入しながらモノに出来なかったダークツーリズムのコンテンツ」と化してますので近日中に見直される可能性は高そう、と来てみたんですが、もしかしたら意外と放置かな?と思ったり。なんせ「三菱スペースジェット」に改称されたのは2019年6月なのに未だに「MRJ」なんですぜ。確かにコロナ禍で閉館もしてただろうし、なかなか手を加えられなかったのかもしれないけど、改称からコロナ突入まで半年以上の「余裕」があった筈。三菱重工としても気合いが入ってればリブランドへの対応はもっと迅速だったんじゃない?

 

ついでに、ほかの展示も見てきました。三菱重工には実はこれまで単独で開発した民間機が2種あり、その一つがこの「MU-2」です。1963年に初飛行し700機以上が製造されており、事業としては赤字だったようですが性能への評価も高く、売れ行きは悪くありませんでした。このあと1978年にビジネスジェット機「MU-300」を売り出しますが、ビジネスジェットの最大の需要地であるアメリカの不況や日米貿易摩擦に巻き込まれるなどの不幸が重なり、大赤字のまま事業ごと米ビーチクラフト社に売却されてしまいました。ただ、その後「ホーカー400」として売り出された後は好調にセールスを伸ばしたそうなので、これも「モノ」は良かったと思われます。そんな過去もあったのにMRJときたら…。

 

ほかにも原子力発電など発電事業や…。

 

宇宙事業に関する展示も。あれ、こっちも最近なんかやらかしてなかったっけ?

 

あと、見どころはもしかしたら出口付近に展示された鉄道や航空機の模型かも。

 

三菱が開発や製造に関わった国鉄型の車両の模型がずらっと並びます。

 

同じように、三菱が建造した船舶や開発・製造した航空機の模型も多数。これも見ごたえアリです。

 

次に訪問したのは「日本郵船歴史博物館」です。ここは2023年3月末にて入居するビルの再開発に伴って一時休館することになりました。

 

こちらは有償の展示エリアは全て撮影禁止でした。日本郵船、元を辿れば三菱グループ創始者岩崎弥太郎が始めた海運事業に端を発しており、なにげで「三菱繋がり」だったりします。開国したばかりの日本で海運を海外の会社に牛耳されそうなところを対抗するため誕生し、一時は独占企業でしたが三井系の会社が参入し競争が激化。このままでは共倒れになるぞ、ということで1885年に2社が合併して誕生したのが日本郵船です。日本郵船の社旗は「二引」と呼ばれる赤の二本線ですが、2社の対等合併も意味しているんだそうです。ほかにも日本郵船が運航していた客船事業や、第二次大戦で所有船を殆ど軍に徴用された上にボコボコ沈められて全く返還されず碌な補償も受けられないまま戦後復興してきた歴史なども詳しく紹介されていました。

 

1936年に竣工したこの「横浜郵船ビル」の美しい内装も必見。再開発ということでこのビルの処遇が気になるところですが、隣接地に高層ビルを建てて歴史博物館はそちらへ移転、このビルは宿泊施設として生まれ変わる計画なんだとか。ホテルになるなら泊まってみたいところですが、こんな歴史歴建造物を使うんであればお高い感じになりそう。

 

ビルの外観も優美で、これが保存されるのは嬉しい限り。3階建てのビルですが、この3回は客船の乗務員の養成所が設けられ、コックやボーイなどもここで教育を受けて乗務をしていたんだそうです。接客や供食に一応は縁があった場所がホテルに、というのも面白いな。

 

そして「なくなるもの」3つめは横浜港さん橋にあります。

 

横浜港を拠点にレストランクルーズを行っている「ロイヤルウイング」です。これも今年2月に突然「2023年5月での運航終了」が発表されました。一応、新造船による運航再開の予定はあるらしいのですが時期などは公表されていません。

 

ターミナルの一角にあるカウンターで手続きし、搭乗券を受け取ります。

 

搭乗口から外へ。

 

これがレストランシップ「ロイヤルウイング」、いま日本で現役最古の客船と言われています。ここに来る前は瀬戸内海の大阪~別府航路に「くれない丸」という名前で就航していました。そう、あの「さんふらわあ くれない」のご先祖様です。

 

slips.hatenablog.com

 

関西汽船の大阪~別府航路には代々フラグシップ船に「くれない丸」の名前が付けられてきましたが、「ロイヤルウイング」の前身となる「くれない丸」は三代目にあたり、1960年に就役しました。鉄道に対抗できる所要時間で別府まで到達するという快速っぷりを誇り、船内設備も豪華な設え。瀬戸内海の景観が楽しめる昼行便を担当し、新婚旅行の定番ルートとしても人気だったそうです。ただカーフェリーの台頭や新幹線の延伸など社会環境の変化から客船としての活躍は限界を迎え1980年に引退。僚船だった「むらさき丸」が引退後に解体されてしまったのに比べれば、1989年から横浜での再就職が叶った「くれない丸」はラッキーと言えるでしょう。結局60年以上も現役として働き続けてきたわけですが、ついに「諸事情」により引退となってしまった次第。噂によると、船齢が古すぎて部品供給などが難しく、定期検査を行えるドックがないため、なんて言われてたりもしますけど…。

 

では、早速乗船しましょう。

 

船内はレストランシップ仕様に完全に改装されており、「くれない丸」だった時代の名残はほぼ残っていないようです。今回は3階の客席にアサインされましたが、船首側のエリアはビュッフェコーナーになっています。ランチやディナーではビュッフェ中心で提供されていますが、ティークルーズではここがドリンクバーコーナーになります。

 

客席エリアは窓のあるスペースにテーブルが並びます。

 

割と大きめの等からも景色は楽しめる感じ。

 

テーブルにはカトラリーが用意されていました。

 

着席して暫くするとスイーツセットが運ばれてきます。この「ロイヤルウイング」、乗船だけというプランもありますが、その場合は屋外デッキにしか居場所はありません。座席を確保するには食事セットのプランを選ぶ必要があるのですが、午後のティークルーズなら3千円台でドリンクバーとおやつ付きなので、コスパ的には悪くないと思います。マンゴープリン、かなりハイレベルだったし。

 

暫くすると横浜港を出港。

 

氷川丸山下公園のあたりを海側から眺める機会って意外にないので新鮮な景色です。

 

暫くすると横浜ベイブリッジを通過します。

 

このクルーズのハイライトの一つでもあるので、多くの人がデッキに上がってきてました。

 

テーブルに戻ったら、バルーンアートのサービスが廻ってきました。他にも写真撮影なんかもあったりして。

 

1階にはショップがあり、オリジナルグッズなども販売。「ロイヤルウイング」モチーフの商品もいくつかあり、記念に購入しました。

 

ショップ脇にはクルーズ航路の案内。

 

ショップ入口の鏡面にはメッセージも。船のイラスト、よくみたら「くれない丸」時代の緑色のやつも描かれてる!

 

約90分のクルーズを終え横浜港に戻ってきました。景色を眺めていたりすると90分はあっという間。横浜港のクルーズだと夜景の方がより「映える」かもね。

 

後ろ姿も美しく、こんな名船がなくなってしまうのは残念です…。