へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

令和元年11発目、Manga見たさに愉快なロンドン。その12:大英博物館「Manga」展を見る、後編。

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さて、「Manga」展に行ったよ後編です。

次のエリアは「すべての人にマンガがある」。ここで、日本の様々なジャンルのマンガが紹介されています。しかも原画付きで。

 

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ちばてつやあしたのジョー」。この作品で恐らく一番有名な、ジョーが真っ白に燃え尽きるシーンの原画ですね。

 

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高橋陽一キャプテン翼」。

 

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SF作品として竹宮惠子地球へ…」も紹介。最近Amazon Kindleで非常に安い価格で販売されていたのであらためて読んでみたのですが、40年前の作品とは思えない…。

 

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松本零士銀河鉄道999」も。

 

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石ノ森章太郎サイボーグ009」です。

 

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宗教を描いたマンガとして、手塚治虫ブッダ」と中村光聖☆おにいさん」を並べるセンス凄い。

 

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加えてその対面にLGBT系を並べるのもクール。 こういうのもキチンと取り上げるのがイギリスっぽい気はします。田亀源五郎の「弟の夫」ですね。

 

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よしながふみきのう何食べた?」もありました。

 

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BLの古典ともいえる竹宮惠子風と木の詩」もちゃんと出てる。

 

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こちらはカラーの原画まで展示されています。

 

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ホラーとして伊藤潤二「うずまき」が取り上げられていました。

 

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ここでは萩尾望都の「柳の木」と末次由紀ちはやふる」を並べて紹介。

 

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諫山創進撃の巨人」の原画も展示。

 

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ここなんて、尾田栄一郎ONE PIECE」の展示があって…

 

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その下には岸本斉史NARUTO」とか並んでるんだよ。フォアグラロッシーニか何かですかコレ。

 

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次は「マンガのちから」。日本では色々な形で「マンガ」が利用されている、という紹介です。ここに出ているパネルは、外務省がゴルゴ13とコラボした海外での安全啓発用コミックのもの。あれ、デューク東郷が「お前は"たびレジ"に登録しているんだろうな?」とか問いかけてくるという中々ステキなマンガでした。

 

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コミケについてもビデオ映像で紹介。

 

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大英博物館の手にかかればコミケのカタログも展示品ですよ。「文字が描いてある」「大英博物館で展示」ってとこが共通なのでほぼ「ロゼッタストーン」と同じってことだな(違う)。

 

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コミケ入場待機列の早回し映像なんてのもあって、ここまでくるとほぼモダンアートのインスタレーションみたいに見えます。

 

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日本でマンガが単なる「エンターテイメント」に留まらないことも、いくつかの作品で紹介しています。手前はちばてつや「ひねもすたり日記」。

 

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竜田一人の「いちえふ」も紹介されていますが、1980年代にイギリスで発表されたレイモンド・ブリッグズの「風が吹くとき」と並べての展示です。

 

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同じテーマとしてこうの史代夕凪の街 桜の国」もありました。こうの史代は展覧会のメインのウサギのキャラクターも描き下ろしています。

 

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東日本大震災をテーマとした、しりあがり寿「あの日からのマンガ」もありましたが、本当に様々なテーマでマンガが描かれているということが、イギリスの方にも理解してもらえたんじゃないでしょうか。

 

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他にも、歴史書としてもマンガが使われていたり、というあたりを江戸時代の草子も合わせて紹介してみたり。

 

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小説などのコミカライズについても触れています。

 

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最終のエリアは「マンガに際限なし」。

 

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赤塚不二夫の娘である赤塚りえ子がマンガ文字をイメージして作成したインスタレーションが中心に据えられています。こちらではこの展覧会でほぼ唯一のアニメ二関する展示としてスタジオジブリが紹介されていました。

 

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松本大洋の「鉄コン筋クリート」の原画はここに展示されていました。

 

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ここで写真を撮ると自分をマンガ化してくれる、というコーナーも。恐らく既存のアプリを使ってるんでしょうが、そもそも「マンガ」についてよく知らなければ、そんなアプリを使おうとも思わないだろうし、と思うと設置の意味はあるのでしょう。

 

なお、会場の外周にはマンガのキャラクターたちが原画とともに描かれています。

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一部ご紹介しましたが、まぁ豪華だわ。

 

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結局、2時間ほどかけてじっくり観覧しました。

 

全般的な感想としては「マンガ好きならロンドンまでの交通費かけて来ても損しない内容」ってとこでしょうか。まず、日本を代表する作家の原画をこれだけ広範囲に集めて一同に展示するなんて機会は滅多にないだろうし、同じように日本で観てまわるほうがもっと高コストになりそう。しかもごく一部を除いて撮影OKってのも、この手の展覧会ではかなりレアなんじゃないでしょうか。恐らく、「イギリスでもっとマンガへの理解を深めて欲しい」ということで出版社の枠なども越えて協力が得られたんでしょうし、SNS全盛の現状から「どんどん撮影して、SNSなどで拡散して貰うことで効果を高めたい」というような意図もあったのかもしれません。

また展示の内容も非常に真摯な印象。欧州の中でもそこまで日本のマンガが浸透しているわけではないイギリスでの展覧会なせいか、「そもそもマンガって?」「日本社会にとってマンガってどうなの?」みたいな「日本人なら考えたこともない疑問」からきちんと読み解く構成で、全体を理解させるような流れになっているところが特徴的でした。日本でもやってほしいくらいだけど、逆に日本でここまで「基礎」からマンガを紹介する展覧会ってのはニーズがないのかも、って気はしなくもないです。

訪問した日は会期最終日。会場を出るころには多くの人で賑わっていましたが、来場者の年齢層は幅広い感じに見えましたね。

 

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その後、1時間ほど常設展示を巡って退館。無茶苦茶広い大英博物館ですが、館内マップには「時間がないならコレは観とけコース」みたいな紹介もあって親切。

 

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入口には「マンガ展は今日は売り切れだよ」の告知看板が出ていました。

「予約推奨」との話でしたが、ホントに人気あるんですねぇ…。今日これで入れなかった人はもう2度とこの展覧会を観ることはできないのだから。