2021年3月のJRダイヤ改正前日、185系特急電車のお別れ乗車のあとは「東京ステーションホテル」へ泊まりました。昨年から日本クラシックホテルの会の9ホテルを「クラシックホテルパスポート」持って尋ねる旅をしてきましたが、この「東京ステーションホテル」でコンプリートとなります。
東京ステーションホテルは東京駅開業の翌年、1915年に開業しました。100年以上の歴史のあるホテルではあるんですが、東京駅の復原工事に合わせて2012年にリニューアルオープンしています。今ではラグジュアリーホテルとして人気ですが、改装前はそれほどでもなかったような…。宿泊費もビジネスホテル程度とお高くない程度。残念ながらその頃に宿泊する機会はありませんでしたが、それほどステキなホテル扱いじゃなかったような…。
東京ステーションホテル物語 (集英社文庫) | 種村 直樹 |本 | 通販 | Amazon
リニューアル前の東京ステーションホテルの様子がよく解るのは、正直この本くらいかなぁ…。ウェブで探しても復元前のホテルの様子はあまり見つかりませんでしたが、こちらのページは雰囲気が伝わるかも。
いずれにせよ、いつのまにかハイクラスホテルになったコチラに、いざ潜入です。
ホテルの入口は東京駅赤レンガ駅舎の中央部分の脇くらいのところにあります。
フロントロビーは意外とコンパクトですが、確かに豪華な印象。改装前にはここに上階に繋がる大きな階段があったようですが…。
部屋のカードキーは東京駅の特徴的なドーム屋根が描かれています。
客室フロアは2階と3階にあり、宿泊者専用のエレベーターで向かうことになります。
エレベーターも重厚感あります。
エレベーターホールから客室への廊下はカードキーで開けるようになっており、セキュリティはしっかりしてます。
このホテル、南北に長い駅舎のほぼ全長に渡って客室が配置されています。
そんなわけで延々と廊下が続いています。
廊下には東京駅にまつわる様々な写真やポスターなどが飾られています。これは復元前の東京駅の様子ですね。1914年に開業した東京駅ですが、1945年の空襲で甚大な被害を受けてしまいます。戦後に修復が行われますが3階建てだった駅舎は2階建てにされ、ドーム状だった屋根も平面を組み合わせたものになりました。これを創建当時に復元しようという話が本格化したのは1990年代からだったと思います。JR化後に赤れんが駅舎を取り壊して高層化するプランが持ち上がった際に「赤れんが駅舎保存」の動きが大きくなり、そこから「それなら今の仮復旧みたいな姿ではなく昔の頃に戻してはどうか」となったわけです。その時、個人的には「復元はしなくてもいいんじゃないか」派でした。実際、「本来の東京駅」であったのは30年程度ですが、「修復された東京駅」となってからのほうがそれよりも長くなっていたわけだし、「戦争で被害を受けたが乏しい資源の中で復旧した」ことも歴史のうちなんじゃないか、と思ったから。でもまぁ、復元された姿もそれはそれで威厳があって悪くないなぁ、という感じです。
今日宿泊するのは東京ステーションホテルの中でも最もリーズナブルなクラスにあたるクラシックダブルルームです。
広さはそれほどではありませんが、高い天井がクラシックホテルらしさを感じさせます。全体に非常にセンス良く纏まっている印象です。
ベッド脇にはサイドボードとライティングデスクが。
デスクはかなりしっかりしたもので、座り心地のいいチェアも備え付けられています。川端康成や松本清張、夏樹静子など日本を代表する数々の文豪がこのホテルで作品を書き上げたというだけあって、「物書きができるデスク」を置くのはホテルとしてのプライドなのかもしれません。
そのせいか、デスクの上に置かれたメモ帳は原稿用紙を模したもの。洒落てるねぇ。
もちろん現代向けのアップデートも忘れちゃいません。コンセントが3箇所もあってパソコンとか持ち込んでも電源確保は余裕です。
ベッドの向かい側にはテレビを設置。この片隅にソファもありました。
テレビの下のキャビネットには冷蔵庫。中身は空で水のボトルだけですが、新型コロナ対策でミニバーを撤去しているようなので本来は色々入っていたのかもしれません。
グラスなどの食器も充実。お茶やコーヒーなども用意されています。
玄関側にはクローゼット。スリッパはここに置いてあります。アイロンも備え付けられてるんですね。
こちらがバスルーム。
アメニティ類も充実。バスアメニティはフランスのフレグランスブランド「イストワール ドゥ パルファン」とのコラボによる、東京ステーションホテル特製のものなんだそうです。
バスルームの一角にはトイレがあるわけですが…。
三角に折られたトイレットペーパーに「TSH」の押印が! こういうトコにやられちゃうんですよねお客としては。
「クラシック」カテゴリの部屋は東京駅のホームがある側に面しています。昔はこの窓から発着する列車を眺めることができ、松本清張の推理小説「点と線」にも出てきたりします。ただ、東北新幹線ホームの増設のために玉突き的に中央線ホームが高層化されたため、今では「壁」しか見えなくなってしまっています。
では館内を探索です。ココに来たからには美しいドーム屋根を眺めないことには始まりません。3階フロアからこの姿を眺められるのは宿泊客だけの特典です。
ドーム沿いにも客室が配置されているのですが、その一角はドームを眺められるギャラリーとなっており、東京駅に関する様々な展示を見ることもできます。特に復元までの過程の説明は必見かも。
こんな近い位置で見れるチャンスはないですからね。
ドーム内の様々なモチーフの解説もありました。かなり「和」の文様を使っているあたり、日本を代表する「中央駅」を造ろうとしていた心意気が伝わってくるよう。
南側のドームの2階にはレストランや宴会場へ繋がる出入り口があります。
こちらの階段もクラシカルなムード。
全般的には「クラシックホテル」というよりは「ラグジュアリーホテル」といった印象が強いのですが、こういう所はやっぱり「クラシック」なままなんだなぁ。
そのまま夕食へ。東京駅近辺でもよかったのですが、「GoToイート」のポイント消化をしたくて上野まで移動。「上野洋食 遠山」で戴きました。
前菜+スープ+メインにデザートとワンドリンク付きで2980円、ただしGoToイートポイント利用必須、というプランでなかなかリーズナブル。これは600円で海老フライを足して貰いましたが、お味もなかなか良かったです。
東京駅に戻ってくると、ちょうど本日最後の運転となる下りの「湘南ライナー」が出て行くところ。多くの鉄道ファンに囲まれています。
215系も最後のご奉公ですね…。
東京駅構内には、赤れんが駅舎の遺構が見れるようになっているところも。
ライトアップされた東京駅の夜景を堪能して…。
ホテルに戻ります。
さて翌朝。朝食は4階のゲストラウンジ「アトリウム」で提供されますが、基本的には宿泊客専用となります。今は期間限定で宿泊客以外にも限定で解放しているようですが…。
「アトリウム」は天井から外光が差し込む明るい空間。東京駅の中にこんなスペースあったんだ!って感じです。
朝食の評判が無茶苦茶いいとは聞いていましたが、確かに種類も豊富で豪華。こりゃ凄いですよ。
実演コーナーもオムレツなど卵料理だけでなくフレンチトーストやグリルもの、和食までとバラエティ豊か。
料理は小皿に盛り付けられて並んでいますが、これもやはり新型コロナ対策で提供方法を変更したもののようです。でもこの方が取りやすいかもしれないねぇ。
パンなども豊富に。
フレッシュジュースやスムージーなども多数用意されています。
デザートも「朝からいっちゃうの?」というレベルの品揃え。もうランチバイキングでもイイでしょコレ。
そういうワケで戴いていきます。アスパラガスはお勧めとしてテーブルに運んできてくれたものですが、甘くて美味でした。
サラダにポークのグリル。
オムレツも戴きました。
鰻丼まであるじゃん…。一口サイズなので気軽に試せます。
牡蛎のグラタンは実演コーナーから。
東京らしく深川めしも。
フレンチトーストもバニラ風味のソースをかけたお洒落なものが出てきますよ。
勿論デザートも。いやぁ、どれもレベル高いわコレ。確かにこの朝食目当てで泊まりたいくらいだなぁ。
また部屋でのんびりして、10時前にチェックアウトしました。これにてクラシックホテルパスポートも9軒コンプリートになったので、無料宿泊券を発行してもらいました。
なかなかお高い方に入るホテルですが、また泊まりたいと思える滞在でした。