全国各地に観光列車が運行されており、そんな列車にいろいろ乗りに行ったりしてたりもするんですが、中京圏にもその手の列車って実はいくつかあります。でも近場って意外と行かないものなんですよね…。名古屋から中央線の快速列車で1時間ちょっとの恵那駅から伸びる第3セクター、明知鉄道でも「食堂車」と称して車内で食事を出す企画をやっており、近場のお出かけとして行ってみたところ、これが予想以上に楽しめるものでした。
恵那までまっすぐ行くのはつまらないなぁ、とリニモ経由で出発。
地下鉄東山線と接続する藤が丘駅は地下。一駅隣のはなみずき通駅から地上へ出ます。
浮上して走行するリニアモーターカーという特性を生かしたのか、アップダウンがかなり激しい路線になっており、車窓風景もかなり変化に富んでいます。
終点の八草駅は乗車と降車のホームが分かれており、到着した列車は一度引き込み線に入って乗車用ホームに入ってくる仕組み。
ここで愛知環状鉄道に乗り換え。「鉄印帳」に参加している会社なので、ここで鉄印を戴きました。
高蔵寺行きが2両で到着。愛知環状鉄道は岡崎と高蔵寺を豊田や瀬戸などを経由して結ぶ路線で、JR化して間もなく全線開業と同時に第3セクターに移行した路線です。旅客数が見込めないと国鉄が判断して廃線を決め、鉄建公団が建設中だった区間の引き受けも拒否したので地元が第3セクターとして引き継いだわけですが、今や1日の輸送密度が軽く1万人を越える黒字路線に。JRのまま残ってもおかしくないような路線だったりします。
高蔵寺駅から中央線快速へ乗り換えました。
で、恵那駅にやってきました。
駅の窓口で切符などを受け取ります。「食堂車」は明知鉄道のウェブから申し込めますが、申し込むと当日の案内と郵便振替用紙が郵送されてきて、これで代金を先払いする流れとなります。
改札口には本日の配席表が貼り出されていました。自分の名前と座席位置を確認して、いざ乗車。
これから乗車するのは、明知鉄道で1日1往復だけの急行「大正ロマン」号。今日は3両編成ですが、最後尾が今日利用する「寒天列車」。毎年4月から9月までやってるようです。今回の料金は4500円ですが、明知鉄道の1日乗車券がついています。また普段は5500円のようですが、今は岐阜県からの補助金があるようで、「通常料金5500円+オリジナルグッズ1000円分のところを4500円で」ということになっていました。
なお2両目は4月・5月限定の「おばあちゃんのお弁当列車」になっていました。道の駅「おばあちゃん市山岡」で販売している弁当を提供するものですが、お値段が岐阜県からの補助金がついて1750円とリーズナブルなのが魅力でしょうか。で、先頭車の1両目が一般車両になってます。
明知鉄道の「食堂車」、特に何か特別な車両が使われているワケじゃありません。通常の運行で使われているロングシートのディーゼルカーの座席の前に長机を設置しただけ、というシンプルなもの。でもこうやって並べられると、何か特別っぽい感じが出てくるのが不思議だなぁ。
テーブルの上には既に料理が準備されています。3段の大きなお重、なかなか凄そう。
お重の上にはお品書き。
お茶はついていますが、そのほかのドリンク類は用意されておらず車内での販売もありません。そのため「欲しければ買って持ち込んでね」という案内があったため、ちょっと燃料を調達。恵那駅にはJR駅舎内のキオスクと明知鉄道駅舎隣にある恵那市の物産販売所があるのですが、アルコール類があるのはキオスクのみ。ちゃんと地酒とか置いてありました。
恵那駅を発車すると、スタッフさんがお重を開けてくれます。なんかボリューム多くない? 同時にウェルカムドリンク?として寒天ジュース「クールスカイ」が振る舞われました。「寒=cool」「天=sky」でクールスカイ、ですか…。
前菜のところてんは自分で押し出して作ります。
あら、結構キレイにできるもんですね。
一の段のお重には蕎麦や押し寿司、茶碗蒸しなど。どれも何処かに寒天が使われているようです。
二の段はローストビーフなどが入りますが。このソースが寒天のジュレだったり。
三の段にはデザートも。寒天を使ったチーズケーキや寒天の羊羹が入っていました。品数が多くて色々な料理が楽しめるのは勿論、お味の方もお上品系でイケてます。恵那から明智までは1時間弱なんですが、これだけのボリュームだと食べ終わって一息ついたら終点、くらいのタイミングになり、乗車体験としてもちょうどいい感じかもしれません。いやぁ、ちょっと舐めてたけどイイわコレ。
終点の明智駅に到着しました。
先頭車にはヘッドマークが付いてました。
明智駅構内にはSLがいました。明知鉄道ではSLの乗車体験や運転体験も行っており、今日はその実施日だったようです。ちょうど動いている姿を見ることができました。
次の折り返しの恵那行きまで30分ほど、明智の街を散策します。
明智は「大正村」として売り出していますが、これは「明治村」のようにテーマパーク的に囲われたエリアがあるわけではなく、古い街並みが大正時代のよう、ということでそのエリアを「大正村」と称している、といった感じ。その中にいくつか有料の施設があったりします。
確かに所々風情のある通りなどが残されており、歩き回るだけでもそこそこ楽しめます。
これから乗る恵那行きにもヘッドマークがついていますが「おたんじょうびおめでとう」って何? 明知鉄道では「列車のネーミングライツ」の販売も行っており、一往復5500円で列車名をつけることができるんです。この日はお子さんの誕生日の記念として買われたご家族がおり、車内放送でもお祝いのコトバがありました。
そのまま名古屋へ帰ろうと思ったのですが、せっかく一日乗車券を貰ったので途中下車してみることに。城下町である岩村駅で降りてみました。
この時間、列車はおよそ1時間毎の運転。岩村城跡まで行かず城下町を散策するだけなら、1時間程度で充分楽しめるくらいの規模感です。
古い街並みを進んでいくと、路肩に旧車がずらっと並んでいます。
ちょうど「恵那クラッシックカーフェスティバル」が開催されていたようで、旧車のオーナーの皆さんも含め賑わってました。
街並みと旧車がマッチしてます。こりゃオーナーさん楽しいだろうな-。
車内で楽しんだ地酒「女城主」の蔵元、岩村醸造がありました。こちらでは「甘酒ソフトクリーム」なるものがあったので、これでちょっと一休み。酒蔵見学などもできるようですが、今はコロナ対策で休止中でした。
岩村駅へ引き返す頃には旧車が走り始めます。イベントも終盤、旧車で隊列を組んで城下町をぐるぐる回るようでした。
岩村駅に戻ってきましたが、こちらも駅舎内は国鉄時代の雰囲気を色濃く残している印象です。
明知線が「明知鉄道」として第3セクターに転換されたのは1985年、JR発足前の国鉄時代末期です。そのため、その頃の姿がタイムカプセルのように随所に残っているのかもしれません。とにかく、どこか懐かしさを感じさせるモノが多いんです。
腕木式信号機もありますが、これは一度撤去されたものを復元したようです。
明智行きに乗ります。
この派手なヤツは極楽駅。3セク転換後に設置された新駅で、近所に「極楽寺」があることから名付けられた様子。最近「極楽さが足りない!」とこんな姿になったようです。
この飯沼駅も3セク転換後の新駅ですが、一時は「日本で一番急勾配のところにある駅」だったところです。本来は駅設置が認められていないレベルの急勾配のところを、実証を繰り返して特例で認可を受けたんだとか。なお、今の日本一は京阪京津線の大谷駅で、大谷駅が1996年に移転した時に抜かれたそうです。
明智駅に到着。名古屋から1時間程度、明知鉄道の乗車時間も1時間程度とお手頃で、路線自体も変化に富んでいて乗車自体も楽しめる。主役級とは言えないけど「そこそこ楽しい」くらいの観光スポットが点在していて、沿線散歩もいい感じ。実は明知鉄道、なかなか侮れないコンテンツでございました。