へんな旅ばかりしています。

へんな旅をしているようなので、自分のための防備録的にやってみます。

下呂温泉のフラッグシップ?「水明館」宿泊記。

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9月末をもって全国で「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」が解除となりました。まだ油断はできませんが、これまで各地で「価格崩壊」レベルまで下がっていた感もある宿泊施設などの価格も、だんだん上がっていくことになるはずです。そういうわけで、まだまだ「これはお買い得」というところに行ってみようと下呂温泉の「水明館」に泊まってきました。そもそも下呂温泉は名古屋から近いうえに全般的にお高めのお宿が多いこともあって、日帰り入浴は何回かあるのですが宿泊したことはなかったんです。その下呂温泉を代表する老舗旅館がメディアでも度々取り上げられる「水明館」。宿泊料金もそれなりにしますが、一人旅向けのダブルルームの販売があり、食事のグレードを上げても「じゃらん」でクーポン利用も使って17300円。これに1800ポイントほど付くので実質1万5千円台で泊まれることになります。1泊2食だと2万円オーバーが相場といったお宿なので、これはお買い得。この機会に試してみることにしたわけです。

 

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実は下呂温泉東海北陸道が全通した今ではなかなか「微妙に行きにくい」場所になってしまった感があります。鉄道だと特急「ひだ」で1時間半~2時間程度とお手頃感のある距離なんですが、クルマだと東海北陸道が飛騨川沿いではなく郡上の方を通っているため、高速道路のインターからは何処からも微妙に離れてしまっているんですよね。今回、往路は中央道ルートで。中津川まで高速を使い、そこから国道256/257号を北上する経路です。折角なので途中、土岐プレミアムアウトレットにも寄ってきました。ちょうどコチラ、下呂温泉への宿泊者には割引クーポンを配布するキャンペーンもやってましたし。

 

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昼食もここのフードコートで。「デラパスタキッチン」というこのお店、名古屋に本社のある「サガミ」がやってるとこでした。

 

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ちょうど岐阜のJAとのタイアップで「岐阜県食材フェア」を開催中で、アウトレット内の各飲食店舗でフェアメニューを展開していました。ここでは岐阜県産バジルを使ったジェノベーゼがあったので頂いてみます。これで1000円ちょっとなら、「観光地」としては悪くないお値段です。サービスクーポンでドリンク1杯無料でした。

 

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下呂温泉に到着したのは夕方4時頃。いよいよ「水明館」にやってきました。

 

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ちょうど宿泊のお客さんが次々に到着するタイミングでもあるせいか、エントランス付近には多くのスタッフがスタンバイしています。クルマで近づくとすぐに案内があり、玄関にかなり近い駐車スペースにサッと案内してくれました。

 

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客室数200を越える大型旅館だけあってロビーは広々、多くの仲居さんが忙しそうに動き回っている姿は確かに「いかにも旅館」です。新型コロナ対策として客室への案内は控えているそうですが、丁寧な説明がチェックイン時にありました。

 

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今回予約したダブル洋室がこちら。恐らくこれも昔ながらの大型旅館によくある「添乗員やバス運転手向け」の部屋だったところなんじゃないかと思うんですが、その手の施設にしては広めなのは流石「老舗」のなせる技かも。大きなベッドを置いてもまだゆとりがある配置です。

 

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ソファの前のテーブルにはお茶菓子やおしぼりなどが用意されていました。

 

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窓側の一角には冷蔵庫や茶セットなど。ポットはお湯と冷水の2つが用意されているあたり、気が利いてます。仕事にも使えそうなデスクもあって、出張なんかで泊まっても困らなさそうかも。

 

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ベッドの脇には照明スイッチやコンセントなどが纏まったサイドテーブルがあって便利。テレビもここです。

 

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バスルームはごく普通のビジホっぽい感じですが、温泉旅館なんでここで風呂入らないしね…。

 

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まだ周囲も明るい時間帯なので、下呂温泉の温泉街をちょっとお散歩してみることに。飛騨川沿いに建つ「水明館」、全部で4棟から構成されている姿が目立ちます。

 

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緊急事態宣言解除後最初の土日ということもあって、温泉街は少し賑わいを取り戻している様子。多くの観光客が町歩きを楽しんでいました。

 

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阿多野谷沿いで多くの観光客を集めるお土産店「ゆあみ屋」、店頭に足湯があったりしていい雰囲気です。

 

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プリンなど買って一休みです。

 

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下呂大橋から温泉街の眺め。名古屋都市圏からの集客がメインとなる大型旅館が比較的多い温泉地ながら、廃墟的な建物が殆どないのが下呂温泉の凄いところ。首都圏だと同じような立地条件と思われる熱海や鬼怒川温泉では大きな問題になってるにのね…。温泉地としての戦略がそれだけ上手かった、ということなのかしら。

 

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お宿に帰還。ロビーに隣接して鯉の泳ぐ大きな池とかあったりするよ。

 

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この水明館には温泉大浴場が3箇所もあります。こんなご時世ということもあって、混雑状況も分かるようになっていました。

 

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最初に行ってみたのは山水閣に位置し露天風呂を備えた「龍神の湯」です。意外なことに、露天風呂があるのは3箇所のうちここだけ。周囲の景色が楽しめるというわけではありませんが、岩と緑に囲まれた感があって、なかなか気持ちいいロケーションでした。

 

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温泉旅館ながら温水プールにフィットネスルームまであるのは凄い。

 

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ゲームコーナーも結構な規模ですね。

 

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ショップも広く、商品も充実してます。

 

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夕食はちょっとグレードを上げ「料理茶屋 北乃寮」で提供される会席を頂きます。夕食の時間は午後5時半と午後7時半から選べるので遅い方にしたのですが、実は下呂温泉では時期によって毎週土曜日の夜8時半から花火を打ち上げてるんです。8月末から感染防止対策として花火が中止になっていたのですが、ちょうど今日から再開されることになったそうで…。早い時間の夕食にしておけばよかったかしら。

 

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カウンターの席に案内してくれました。まずは地ビールで。

 

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本日のお品書きがコチラ。「秋の収穫祭」メニューとのことで、秋の味覚が松茸まで入った上に飛騨牛まで出てくる豪華な内容です。

 

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先付けは「甘鯛昆布蒸し 白胡麻豆腐 蓮根すり流し 青味 本山葵」。わぁお上品、「正統派の和食」です。

 

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前菜も華やか。「粟麩豊年揚げ 青味 露生姜」「鮎けんちんうるか醤油焼き ばい貝 銀杏 松葉串」「焼き松茸握り 菊花シャリ いくら 払い柚子」「柿 葡萄 白酢和え」の4品が美しく盛り込まれていました。フルーツを白和えにするってのがユニークですが、コレが意外と合うのが不思議。

 

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料理が美味しいとお酒も進みます。旅館オリジナルのものもあったのですが、ここはやっぱり地元・下呂のお酒「天領」でいきましょうか。

 

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続きまして土瓶蒸し。

 

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「秋鱧と松茸の土瓶仕立て 恵那鶏 三つ葉 酢橘」と、まるまる一本というわけにはいきませんが松茸入ってます。香りも楽しみながら中身までしっかり完食しました。

 

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ここでお造り登場。鮪に帆立、鯛の3点です。よく「山奥の温泉宿で鮪の刺身とかいる?」みたいなハナシになることもありますが、会席だとやっぱり「流れ」としてあったほうが「締まる」感じはしますね。

 

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さて、いよいよ主役級「飛騨牛と松茸の朴葉味噌焼き」です。「飛騨牛」に「松茸」、それを飛騨名物の朴葉味噌焼きにするという、まぁこのエリアで喰うモンとしちゃ完全無欠の一品でしょうねコレ。

 

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そのあと揚げ物として「南瓜飛龍頭パン粉揚げ 鱶鰭餡 水辛子」が運ばれてきました。南瓜も秋の味覚、餡がかけられていて揚げ物ながらあっさりした感じで戴け、霜降り牛のあとのお口直しとしてもピッタリという印象。

 

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お食事は飛騨産コシヒカリと赤だしの味噌汁。先ほどの朴葉味噌が飛騨牛からの脂を受け止めているのでご飯のお供に最適になってます。

 

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最後にデザートとして果物を戴いて、夕食の〆となりました。いやぁ旨かったわ…。これが有名老舗旅館の実力というものですか。下呂温泉がそれほど衰退してないのも、団体客を受け入れながら個人客も充分呼び込めるサービスレベルをキープできていたお宿が多かったせいなのかもしれませんね。

 

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夕食後はまた温泉。今度は臨川閣の「下留の湯」へ行ってみました。こちらは内湯だけですが天井も高く広々としており、檜の内装がいい雰囲気出してます。なお、外来入浴ではここは使えず、宿泊者しか入浴できないところでもあったりして。

 

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もう夜も遅い時間ですが…。旅館内で中華料理を提供する「龍遊里」へ。

 

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こちらでは夜11時半まで夜食メニューの提供があります。ここで出している担々麺が旨いらしい、という噂を聞いておりまして、是非食べてみたい!とやってきた次第。

 

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これが隠れた?名物「飛騨納豆喰豚坦々麺」、夜食でしか提供していないメニューです。辛さはかなり抑えられていてお子様でもイケちゃいそうなレベルですが、一緒にラー油が提供されるので調整可能。何よりその濃厚な味わいは確かに評判になるのも納得といった感じです。辛いモノを求める方にはちょっと物足りないかも知れませんが「ゴマの濃厚なヤツ」がお好きなら試す価値あり、です。お値段が1320円とまぁまぁするけどね…。

 

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就寝前にもう一回温泉へ。最後の1箇所となる「展望大浴場」は飛泉閣の最上階となる9階に位置しています。川側とその反対側に男湯と女湯が分かれて配置されいるのですが、「展望大浴場」の名に相応しい眺望が楽しめそうな川側の方が女湯。でも男湯は下呂駅を見下ろすトレインビューだから、ちょっと許す。なお、3箇所のうち24時間入浴できるのはここだけで、他の2箇所は夜間はクローズとなります。

 

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朝風呂は展望大浴場から。

 

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川側の浴室だとこんな風景が見れたのかも。

 

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朝食はこの旅館ではメインダイニング的な位置づけとなる「常磐」での提供。夕食も基本プランだとこちらになることが多いようです。

 

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和洋豊富に揃ったビュッフェスタイルですが、感染症対策として全て料理は小皿に盛られての用意。ご飯や味噌汁などはスタッフが盛り付けてくれます。

 

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一巡目は「旅館の朝ご飯」イメージで和食攻め。肉じゃがの旨さが凄かったんですが、こういう一見フツーの品が旨い店って信用できるよね。

 

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で、そういうトコではたいていカレーも美味しいんですよ。

 

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追加で洋風のものを。パンはスタッフが取り分けてくれるのですが、ちゃんとトースターで温めてくれます。まぁちょっと焦げちゃってるにはご愛敬ってことで。

 

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なお、こちらの朝食でのご自慢の逸品はこのフレンチトーストらしいです。確かにふわふわでちゃんと美味。旅館でフレンチトースト?って感じですが、ここにはちゃんと洋食のダイニングもありますからね。

 

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温泉旅館だとチェックアウト10時ってのが多いんですが、水明館は11時。朝食のあともまた温泉に入ったりとのんびり過ごせるので有り難いですね。お宿の皆さんの丁寧なお見送りを受けて出発しました。

 

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名古屋に戻る前にもう少し観光っぽいことを…と下呂温泉合掌村で毎週日曜に行われている「いでゆ朝市」に立ち寄ってみました。まぁ普通かなぁ。

 

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天気もいいので、もう一度温泉街をぶらぶら歩いてみることに。中心地近くに駐車場があって便利です。

 

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川沿いを離れて温泉街の中心の方へ。

 

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地名からのイメージからか「カエル」モチーフ多数。

 

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お店などが並ぶエリアはそこそこの賑わい。かなりお洒落なお店も増えているような気がします。

 

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そのなかでも特に目立っていたのがこのお店。「ゲロゲロバター」って、もうそういうのが許される時代なのか…。「下呂」って地名が「VOW」とかで弄られてた世代としては複雑。

 

vowtv.jp

 

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下呂温泉の公衆浴場「白鷺の湯」。下呂温泉は白鷺が傷を癒やしていたことから発見されたという伝説があるのですが…なんか日本の古くからの温泉地って「鷺が傷を癒やしていた」きっかけ、というハナシのところ多くないですか? 今年7月に行った島根の鷺ノ湯温泉もそんな感じだったぞ確か。誰か「日本の温泉、鷺きっかけで発見されすぎ問題」とかで追求してくれませんかね。

 

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なお、白鷺温泉の向かいには「GEROGEROみるくスタンド」なるお店が。ゲロゲロでミルク、イメージ的にいいのか。

 

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名古屋への帰りは飛騨川沿いの国道41号を通っていきました。高山本線の車窓からだとそこまでの感じがしないのですが、国道を通るとこのルートがかなり険しい谷間にあるのが良くわかります。その途中で立ち寄ったのが「天心白菊の塔」です。

 

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ここは1968年に発生した「飛騨川バス転落事故」の現場であり、その慰霊碑が「天心白菊の塔」です。乗鞍岳に向かうツアーのバス2台が折からの大雨による土砂崩れで川に転落、犠牲者104名という日本最大のバス事故となりました。名古屋の団地をターゲットに発行していたフリーペーパーの企画したツアーで、バス15台という大規模なものだったこともあり、なかには家族全滅というケースもかなりあったようです。ツアーを企画したフリーペーパーを発行していた会社の社長も家族を事故で失いながら事故の被疑者となるなど、事故の犠牲者だけでなく事故後の関係者にとっても地獄のような状況でした。

 

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実はこの慰霊碑、近日中に移転されることが決まったため、その前に寄ってみたかったのですよ。事故の遺族は国に対してもその管理責任を問うて訴訟を起こし、名古屋高裁で「全面的な人災」と認められました。この移転は、国道41号の改良工事が進み、この慰霊碑のところにも新しく道路が拡幅・改良されることになったため。事故から既に50年以上が経過してしまっていますが、そんな事故の原因となった「危ない環境」が少しでも改善されるのであれば、慰霊碑が現場を離れたとしても犠牲者の皆さんにはご納得いただけるんじゃないでしょうか。

 

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慰霊碑の設置されている付近はこんな景色。確かに崖崩れが起きてもおかしくないような環境ですね…。