「奈良ホテル」に泊まったあたりから「クラシックホテル」にちょっと塡まり、コロナ禍で宿泊料金の相場が下がったのもあって色々と泊まってきました。その中でなかなかチャンスがなかったのが「山の上ホテル」。このホテル、老朽化を理由に2024年2月に一時休館を発表しました。再開は未定とのことなので今のうちに泊まっておかないと二度とチャンス来ないかも!とニュースを知ってすぐに予約を確保しました。もともと客室数が多いホテルではないので、すぐに満室になっちゃったそうですが…。
「山の上ホテル」は御茶ノ水駅から徒歩5分ほど、明治大学に囲まれた一角に建っています。開業は1954年と比較的新しく、歴史という面では帝国ホテルや東京ステーションホテルほどではなかったりします。それでもニューオータニやオークラより前で、東京にまだ「ホテル」が少なかった頃ではありますが…。ただ、この建物は1937年に完成したもの。「佐藤新興生活館」として、近江で活躍した建築家であるウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計しました。戦後はGHQに接収されましたが、解除後にホテルとして営業を開始。アールデコ様式が美しい建物もこのホテルの見どころの一つでもあります。
ドアマンの常駐するエントランスからホテルへ。
ロビーやフロントは比較的コンパクト。周囲に出版社が多かったという立地から、編集者が作家を缶詰にするのによく使われていたこのホテル、担当作家の原稿が仕上がるのを待つ編集者でごった返すこともあったんだとか。
チェックインを済ませ、エレベーターで5階へ。
階段もありますが、金色の優雅な手すりが印象的。戦時中は金属ということで供出されてしまい、あとで復元したものです。
このホテル、部屋数はわずか35室。5階のフロアにもこれだけしか客室がありません。
階段室の最上階の天井にはステンドグラス。
上から覗くと螺旋状の階段が美しい。
アサインされた客室へ入りました。入口脇にはクローゼット、正面はバスルーム。お部屋は右手にあります。
シングルルームの室内はこんな感じ。
窓側にはライティングデスクと化粧台を設置。
こちらにもチェアとテーブルがあります。
こちらがバスルーム。
アメニティには「山の上ホテル」のロゴが入っていました。
ホテルの地下1階には歴史を紹介する展示があります。
このホテルを定宿とした文豪の皆さんの紹介も。
こちらはホテルの昔のメニューやパンフレットなどが展示されています。開業初期の広告には「なんかボラれそうとか思われてるようですが大丈夫!一度来てみて!」みたいなのもあって、時代を感じさせます。
そのほか、ロビー周囲にもいろいろな展示があって見ていて飽きません。設計図面とかも飾られてました。
ホテルの規模の割には飲食店の数が多いホテルですが、休館間際ということでどこも既に予約で満席。予約なし営業のコーヒーパーラーも既に本日分の整理券配布は終わっていたため、夕食は外で食べることになりました。
神保町の本屋などをぶらぶらしながら良さげなお店を探してみましたが、こちらから漂うごま油の香りに引かれ「天麩羅はちまき」へお邪魔しました。
からっと軽やかに揚がった天麩羅はお手頃価格ながら美味。
ホテルへ戻ります。明大通りに設置されたホテル看板にも灯りが。
夜のホテルの姿も絵になります。
ホテルのサインが光ってるのもなかなか味がありますな。
フロントそばには小さなバーがありますが、こちらも大盛況。空きを待っているお客さんがロビーに溢れているような状態なので訪問は断念しました。
翌朝ロビーに降りてみると凄い行列ができています。地下1階のパーラーの整理券を待つお客さんが早朝から列を作って待っている様子。整理券の配布開始からすぐに本日分の枚数を配り終わったようで、11時半の開店前に「本日の受付終了」の表示が出ていました。
もうちょっとホテル周囲をお散歩。建物を眺めてみました。
このホテル、なかなか複雑な地形のところに建ってます。エントランス側は1階がロビーですが、このトラックが停まっているあたりには地下1階へ繋がる入口があります。パーラーやレストランが多く配置されているのがこの階。坂を下りきったところに地下2階へのドアがあり、こちらはワインバーになっていました。
11時過ぎにチェックアウト。ショップでステッカーを買おうと思ったのです、こちらも凄い行列です。どうもレストランなどには入れないかわりにホテルメイドのケーキ等を手に入れようという方も多いようで…。昨日の夕方は誰も並んでなかった(もうケーキとか売り切れだったからね)ので、その時に買っておくべきだった! 30分ほど並んでいるうちに「せっかく並んだんだからケーキくらい買わないと勿体なのでは?」という気持ちになってきました。
そんなワケで買っちゃいました。
すぐそばの明治大学のアカデミーコモン1階のフリースペースでご開帳。
チーズケーキとプリンを購入しました。チーズケーキは最後の1個で、非常に滑らかで旨い。プリンも固すぎず柔らかすぎず,といった感じです。
せっかくなので地下の博物館も見ていきましょう。こちらは阿久悠記念館。阿久悠は明治大学出身だそうですが、様々な賞のトロフィーなど貴重な展示品も多数あって、なかなかの充実ぶりでした。
以前は「明治大学刑事博物館」というのがあった筈なんですが、今では他の展示も加わって「明治大学博物館」となっているようです。
ギロチン台や「鉄の処女」は健在。さすがにコレ、実物ではなくレプリカなんですね…。